
「フード・インク」(アンプラグド配給)を見た。アメリカの主に肉や加工食品、ファストフードを中心とした「食」の状況が、一部の巨大企業によって成立している様子が精細に描かれる。効率と儲けを優先、その結果、健康被害につながる実態が露わになる。そういえば、ハンバーガーばかり食べ続け、死にそうになった男のドキュメント映画があった。フランスの小学校の給食に有機野菜を導入する経過を描いた「未来の食卓」、コーンの流通経路にメスを入れた「キング・コーン」、ヨーロッパの食肉処理や野菜の収穫を静かに描いた「いのちの食べ方」などなど、「食」をめぐっての優れたドキュメント映画は多い。
残念ながら、人間は、動物か植物を食べることでしか生き延びれない。食べないワケにはいかないのである。広い意味で、アメリカの「食」の事情を知ることは、いまの日本の「食」を考えることでもある。いったい、いま、「食」はどうなっているのか?

映画はアメリカで「食」に関してどのようなことが起こっているのかを、声高ではなく、淡々と語る。そして、消費者に届くまでの「食」の流れを遡る。ファストフード、食肉の生産加工、飼料の現実などなど。一部の大企業に支配されている「食ビジネス」のありようが、しっかりとルポされる。アメリカのスーパーでは、平均4万7千もの食品を売っている。いろんな食品の生産地と消費者の間には、カーテンが引かれている。つまり、食品業界は真実を隠している。パックされた肉の食物連鎖をたどると、見えてくる現実がある。たとえば鶏。流れ作業で、まるで工場で作られる工業製品のよう。家畜も労働者も虐待されている。食べ物はますます危険になり、その事実は巧妙に隠されている。ひと握りの多国籍企業が、フードシステムを支配している。
我々は、何を食べていて、何を語り、知ることができるのか? 映画は、このようなナレーションで始まる。食品の感染で子供を亡くした女性、オーガニックの牧畜農家、食問題のジャーナリストなどが登場、それぞれの考えを述べる。巨大メーカーは、取材を拒否する。かなり悲観的になる。貧しい人たちは、いったい、何を食べればいいのだろう? それでも、映画は、「食の安全のために私たちができること」をいくつか提案する。私たちが、フードシステムの変革を、心から求めること、である。6年以上の時間をかけて、ていねいに撮った監督、プロデューサーは、ロバート・ケナー。いい仕事と思う。


