フランス現代美術のエッジを見る「フレンチ・ウィンドウ」

2011年 6月 9日 18:45 Category : Art

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 東京・六本木の森美術館で「フレンチ・ウィンドウ展」が開催中だ。これはフランスのアートコレクター団体ADIAFが主宰するマルセル・デュシャン賞10周年を記念して開催されているもの。あまたあるアート関係の賞の中でも、コレクターの視点で選ばれる賞というのは類を見ない。

サーダン・アフィフ《どくろ》2008年 ロックウール二重天井、塗料、木、ステンレス鋼球、照明 サイズ可変 国立現代美術基金(FNAC)蔵、パリ Courtesy: Galerie Michel Rein, Paris 撮影:渡邉修 写真提供:森美術館


 マルセル・デュシャン賞の基準は、フランス在住であること。国籍不問でもっともその年に革新的で、フランスのアート界を牽引していくようなアーティストに捧げられる。ジャンルも絵画、写真、映像、彫刻、インスタレーションと幅広い。

 「フレンチ・ウィンドウ展」は、デュシャンの代表作「フレッシュ・ウィドウ」のもじりだ。この作品はレディ・メイド(既製品)シリーズのひとつ。ガラスケースに入れ大事そうに置いてあるのは、住宅用の窓枠「フレンチ・ウィンドウ」と呼ばれるもの。観音開きと言えば分かりやすいだろうか。まあ、ただの窓枠である。これは、デュシャン特有の言葉遊びのひとつ。「フレッシュ・ウィドウ(なりたての未亡人)」という名を冠されて、窓が黒く塗られたフランス窓を見て人は何を思うだろうか。「FRENCH WINDOW」から「N=虚無」を抜いたものが「FRESH WIDOW」(ちょっと綴りは違うけど)という解釈をしている人もいた。どちらにせよ、単なる窓枠の名前を変えただけでこんなにも飛躍的にイメージが拡がるというのが痛感できる作品である。

 そんな形で「フレンチ・ウィンドウ展」では、世界一有名な便器であろうデュシャンの作品「泉」を始め、「三つの停止原器」「ヴァリーズ」「瓶乾燥機」等、全12点のデュシャン作品の部屋《デュシャンの窓》から始まり、《窓からの眺め》《時空の窓》《精神(こころ)の窓》《窓の内側》とデュシャン賞の受賞作家の作品をテーマ別に構成し、新しい思考の扉となるいくつもの「窓」がインストールされている。

ヴァレリー・ジューヴ《コンポジションNo.1》2007/09年 4作品から構成されたポリプティック 255x340cm Courtesy: Galerie Xippas 撮影:渡邉修 写真提供:森美術館 (c)ADAGP,Paris&SPDA,Tokyo,2011


 ヴァレリー・ジューヴはサン=エティエンヌ生まれでパリで活動しているアーティスト。《コンポジションNo.1》は、ほぼ同時期に撮られたいろんな場所の壁と、一人の女性の写真でひとつの作品が構成されている。それ以外に何も情報は記されていない。そこにある石やコンクリート、レンガの壁はどこの場所のものかもよくわからないが、雨や風にさらされてきたのだろう、とにかく古そうだ。作っては補修され作っては補修され、部分的に崩れ、違う素材であてがわれている。物悲しそうにも見えるが、左上で高層ビルをバックに空を見上げている女性の表情は清々しい。壁はそれまで何に出合ってきたのか。ひとつの壁から広がる想像も果てしないが、それが複数構成され、さらに「人」が加わることで意味のレイヤーは増していく。

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