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今週末見るべき映画「フェア・ゲーム」

2011年 10月 28日 12:20 Category : Art

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 アメリカという国は、自由で、豊かで、強い国である。世界じゅうで、いろんな争いごとがあれば、駆けつけていって、人間の自由を守るために、いろんなことをする。そしてアメリカは、正義という言葉をよく口にする。いわば、世界の警察官、裁判官でもある。

 そのアメリカが、2001年9月11日、同時多発テロに襲われた。多くの人が亡くなった。アメリカを憎む人も多い、ということだろう。そこで、こういったことが起こらないよう、アメリカは、襲った人たちをテロリストと呼び、兵器が手に入らないように画策する。テロリストを探し出して抹殺しようとする。

 そして、アメリカは、たくさん持っている核兵器を、よその国が作らないよう、主張する。開発されると、いろいろと困ることがあるからだろう。また、大量破壊兵器も、よその国が持たないようにと考える。どこかで、いろんな兵器が作られ、それがテロリストの手に渡ると、また、9・11のようなことになるからだろう。

 いろんな映画を作るアメリカである。これからも、アメリカのこのような事情をテーマにした、多くの映画が作られることと思う。本欄で紹介した「ブッシュ」でも、ブッシュ本人と、その政権自体のいい加減さが、あますところなく描かれていた。また最近では、「グリーン・ゾーン」という映画があった。イラクで作られているはずの大量破壊兵器を捜査するアメリカの兵隊さんの話だが、マット・デイモンが、いくら兵器を探しても、出てこななかった。

 10年ほど前、当時のアメリカのブッシュ大統領は、イラクが核兵器を開発している、大量の兵器を保有している、許せない、と考えた。そこで、CIAやいろんな政府機関に、調査を命じた。が、イラクには、そういうものがなかった。なのに、アメリカは、2003年、イラクに宣戦布告、攻め入った。

 とんでもない話である。映画「フェア・ゲーム」(ファントム・フィルム、ポニーキャニオン配給)は、このとんでもないアメリカの話を描いている。

 アメリカには、自らの政府の恥部を描いたり、CIAなどの政府機関の陰謀を暴くといった映画が多く作られている。自浄作用とでも言うのだろうか、このままのアメリカではいけない、と思う映画人が多いのだろう。そう、アメリカ映画は、ノーテンキなものばかりではないのである。

 アメリカは、世界じゅうからエネルギー資源を集めたり、兵器を製造したりしている。アメリカは、いわば暴力装置とでもいうべきものを、世界のあちこちで仕掛けないことには、経済的に成り立たない国かもしれない。よその国が、どんどん兵器や戦闘機を作ったら、アメリカの作った兵器や戦闘機が売れなくなる。なんとも、ばかげた話と思う。そのばかげた話を映画にしようと思う映画人のいることに、アメリカの良心を見いだしてはいるのだが。

 「フェア・ゲーム」は、CIAの諜報員だったヴァレリー・プレイムという女性が、2007年に書いた「格好の標的:CIAのトップエージェントは、いかにして国家に裏切られたか」という本に基づいている。この本は、ちゃんとCIAの検閲をパスしているそうだ。アメリカの友人が、この本を買ったら、CIAにとって都合の悪いところは、黒く塗り潰されている、と嘆いていた。

 映画のタイトルの「フェア・ゲーム」は、ヴァレリーの書いた本のタイトル「格好の標的」から取られている。映画は、イラクに核兵器も大量破壊兵器もなかったという事実を報告したことで、いろいろな危機にさらされる夫婦の姿を描いていく。

イギリスからの有力情報もあり、イラクは核兵器を開発し、大量の武器を保有しているはずだ、この調査報告はまちがいだ、とブッシュ政権は決めつける。つまり、政府は、イラクを攻撃する情報、大義名分が欲しかったのである。

 ナオミ・ワッツがCIAの諜報員ヴァレリーに扮して、あちこちで諜報活動に従事する。ヴァレリーを支える夫のジョー役はショーン・ペン。ジョーは、元ニジェールの大使で、国務省の依頼で、アフリカのニジェールに赴く。もし、イラクが核兵器を開発しているとしたら、ニジェールあたりから、濃縮ウランを買い付けているはず、というわけである。

 政府は、夫婦のそれぞれの調査結果を、よしとしない。そして、国家として漏らしてはならないヴァレリーの身分を、政府はマスコミにリークする。ヴァレリーはこれで、最適な攻撃対象、つまり格好の標的になる、と。

 映画は、サスペンスたっぷりに、危機に陥った夫婦が、いかに国家、政府を相手に、抵抗し続けていけるのかを追う。はたして、この夫婦が、どのようにして真実を明らかにできるのだろうか。

 政治がらみの映画には、どうしても堅苦しい雰囲気がつきまとう。が、本作は、やはりCIAの暗部を描きながら、見事なエンタテインメントに仕上げた「ボーン・アイデンティティー」のダグ・リーマンの演出。起承転結の運び、メリハリのある構成。主役ふたりの力演もあって、堅苦しさは感じない。
 ラストに、ことのいきさつと自らの信念を、若い人たちに語るジョーのスピーチがある。圧巻である。

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