映像の身体性を問う「恵比寿映像祭」、26日まで

2012年 2月 25日 00:00 Category : Art

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 東京・恵比寿の東京都写真美術館で毎年恒例となった「恵比寿映像祭」が26日まで開催中だ。今年のテーマは「映像のフィジカル」。近年現代アート界やさまざまなところで「身体性」の重要性について問われているが、それは映像の世界でも同じだ。ここで使われている「フィジカル」という言葉には二つの意味がある、「物質性」と「身体性」だ。

 映像とはどんな「もの」であろうか? フィルム? カメラ? 光?はたまた、網膜に写る像なのか、脳の中に出てくる記憶なのか… 周辺の要素をとらえて、映像を織りなすものは挙げられるが、物質として映像は存在するのか否か。もうひとつの「身体性」とは、映像によってもたらされる新しい身体的感覚、身体を駆使しないと映像体験ができない作品、身体のことを再考せられる作品などなど。

 展示では3フロアに渡り14名の作家によるフィジカリティを感じる作品が展示されている。どれも興味深い作品ばかりだったが、いくつかピックアップして紹介しよう。

 思わず溜息をついてしまう映像体験ができたのは、ドイツのユリウス・フォン・ビスマルク氏による「ザ・スペース・ビヨンド・ミー」。まず、展示空間に入れる人数が限られている。展示空間に入ると、円形の空間のど真ん中に1台どんとカメラが設置されており、周りはぐるり1周スクリーンに囲まれている。真ん中にあるカメラは自動制御されており、ゆっくりと回転しながらスクリーンに映像を投影していく。そこまで聞くと普通の映像のようだがそうではない。

ユリウス・フォン・ビスマルク「ザ・スペース・ビヨンド・ミー」2010
インスタレーション(蓄光素材に16ミリフィルム投影)/作家蔵

 スクリーンには蓄光塗料が塗られており、投影機から紫外線が投射され、映し出された像は淡い光の粒となってゆっくりとスクリーンにその痕跡を残す。映し出されているのは、一人の男性(作家本人であろう)。映像の中でその男性はなんらたいしたことをしているわけではないのだが、見ている方は、ぼんやりと淡く映し出される映像とカメラが動く音が相まって、この男からまったく目が離せなくなるのだ。まさにフィジカルの代表格といえよう。

 ウィーンの作家、ヨハン・ルーフ氏は物質としてのフィルムを体感させてくれた。「すばしこい茶色の狐が怠け犬を飛び越す」という作品。この言葉は、「いろはにほへと(色は匂ほへど)」というような、アルファベットを重ねることなく並べた言葉遊びがタイトルになっている。映画から抜き出された3664コマのフレームをつなぎ合わせた作品である。

ヨハン・ルーフ「すばしこい茶色の狐が怠け犬を飛び越す」2009
ヴィデオ・インスタレーション/作家蔵

 フィルムの横に空いている穴(スプロケット)が連なっていたり、フィルムの横にサウンドトラックが刻まれていたり。古い方がよいとか悪いとかそういう話ではなく、いまの手法では見ることのできないフィルムの物質性をとらえている。フィルムの時代なんて知らない世代の人が見ても「もの」として面白い、そんな作品。

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