今週末見るべき映画「アーティスト」

2012年 4月 6日 17:00 Category : Art

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 昔、父親は酒を呑むたびに、古い映画の話をした。話に出てくるのは、まっさきにマルクス兄弟、ダグラス・フェアバンクス、それにルドルフ・ヴァレンチノの映画だった。いずれもサイレント映画ばかりだが、よほどダグラス・フェアバンクスの剣戟映画が好きだったのか、「奇傑ゾロ」や「三銃士」、「ロビン・フッド」、「バグダッドの盗賊」などの映画を、剣戟の身振りを交えて語った。闘牛士の身振りは、ルドルフ・ヴァレンチノだったようだ。
 フランス映画も多かったが、これは戦後に見たらしく、マルセル・カルネ監督の「天井桟敷の人々」と、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「望郷」だった。「天井桟敷の人々」でのジャン・ルイ・バローのパントマイムを真似たり、「望郷」のジャン・ギャバンのセリフ、「ギャビー!」と叫ぶころには、もう一升瓶がカラになっていた。

 フランス映画「アーティスト」(ギャガ配給)を見て、まっさきにそのような昔の話を思い出した。1920年代、映画がサイレントからトーキーに変わるころ、サイレント映画のスター男優が若い女優と恋仲になる。やがてスター男優は凋落し、若い女優がトーキー映画の大スターになっていく。まさに「スタア誕生」と「雨に唄えば」の筋書きと時代背景をミックスしたような映画と、とりあえずは言えるだろう。

 「アーティスト」は、今年のアカデミー賞の作品賞、監督賞(ミシェル・アザナヴィシウス)、主演男優賞(ジャン・デュジャルダン)、作曲賞(ルドヴィック・ブールス)、衣装デザイン賞(マーク・ブリッジス)の5部門を受賞した。実際、見ていて、ほのぼの、うきうき、ああ、映画っていいなあ、とため息をつきながらの至福の時間が流れていく。


 サイレント映画ふうの運び、モノクロである。音楽が効果的に入り、効果的に沈黙となる。セリフは、時折、字幕で挿入される。あとは、俳優たちの身振り手振り、表情の変化だけで、すべてを物語っていく。テリア犬と思うが、アギーという犬が登場する。仕草が可愛く、後半では主人のために大活躍する。カンヌ国際映画祭では、映画に登場する犬に与えられるパルムドッグ賞を受賞、名演だ。多くの映画の有名なシーンが彷彿とする。なにより、数々の映画へのオマージュと、映画そのものへの愛に満ちあふれている。

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