『さあ帰ろう、ペダルをこいで』(エスピーオー配給)は、いわばロード・ムービーの体裁をとるが、単なるロード・ムービーではない。現在と30数年前からの過去が交錯し、ここ30数年のブルガリアの現代史が、くっきりと浮かび上がる。ヨーグルトやバラ、ワインなどで有名な国ではあるが、中東やヨーロッパ諸国、旧ソ連の政治に翻弄されたブルガリアである。そのブルガリアの、ある家族が辿った運命を、狂言回しよろしく、ボードゲームのバックギャモンが牽引していく。政治に反逆、民衆の立場に立ったバイ・ダンにとっては、時代背景は厳しく悲惨だけれど、バイ・ダンは言う。「人生はサイコロと同じ。どんな目が出るか、それは時の運と、自分の才覚次第だ」。

かつて、バックギャモンに凝った時期がある。双六と同じように、サイコロを振って、15個のコマを進めるだけのゲームだが、奥が深い。自分と相手のコマの進行をめぐっての駆け引きや読みが必要で、2個のサイコロの出目という運の要素が働く。劇中では、「名人も初心者も楽しめるバックギャモン。コテンパンにやられても、ひるまずにコマを進めよう」と唄われる。実に面白いゲームなのに、仕事にかまけて、いつの間にか興じることをやめてしまった。
いろんなシーンで、効果的にバックギャモンが登場する。バックギャモンを通して語られるバイ・ダンのセリフが、ことごとく、いい。しかも、バイ・ダンの信念に裏打ちされた生き方は潔く、家族や仲間たちへの慈愛に満ちている。


