紙で再構築された事件現場 トーマス・デマンド展

2012年 6月 6日 09:00 Category : Art

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 トーマス・デマンドは1964年ドイツ・ミュンヘン生まれ。ミュンヘン美術アカデミーでインテリアデザインを、その後、デュッセルドルフ美術アカデミーで彫刻を学ぶ。彫刻家として美術家のキャリアをスタートするが、1993年に渡英、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジで学びはじめた頃から写真家に転向する。2003年、第50回ヴェネツィア・ビエンナーレに参加。2006年には世界的なキュレーターで批評家であるハンス=ウルリッヒ・オブリストがディレクターに就任したばかりの、サーペタイン・ギャラリー(ロンドン)で個展を開催し、美術作家としての世界的な評価を不動のものとした。

 デマンドの作品は、被写体となる精巧な模型とともに、実際の事件現場を原寸に近いサイズに引き伸ばした巨大な写真作品に特徴がある。

 作品は大きく引き伸ばされることで、被写体となった模型の紙というマテリアルがもつ、つるっとした質感や脆さが画面上に際立ち、それが似せてはいるが、オリジナルのトレースであることを一層際立たせている。作品の元ネタとなった映像や写真は、インターネットで検索することが可能で、デマンドの作品のイメージや構図と比較することができるのも面白い。

 オリジナルとコピーのその距離の近さは、デマンドの作品が用いる紙というマテリアルや、世の中に氾濫する写真というフォーマットを用いて表現されることの身近さとどこかで繋がっているようにもみえる。

 何もデマンドの作品のすべてが、現実の写真や映像をそっくりそのままトレースし、引用して作られているわけではない。デマンドは実際の写真やイメージなど、作品のもとになる参考写真がない場合でも、記憶やイメージを自ら再生して作品をつくることもあるという。

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