紙で再構築された事件現場 トーマス・デマンド展

2012年 6月 6日 09:00 Category : Art

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 今回の展覧会開催にあわせ来日したデマンドは、本展の記者発表の席で、紙でつくられたオブジェクトの中身が空洞であることに触れ、自分は芸術家であり、ジャーナリストではないから、そこに批評的な意味は込めていないと言っていた。

 だがそれを観る者は、紙というマテリアルで模型が作られることで、リアリティの手がかりとなる、痕跡や匂いといった生々しさが意図的に排除されたようなデマンドが作り出す被写体に対し、情報化社会におけるリアリティとは、当事者以外には単なる表面的なイメージや現象にすぎない、というメッセージを読み取ることも可能だろう。

「アーカイブ」1995年

 デマンドが手がける映像作品も写真作品同様、インターネットや新聞などで馴染みのあるイメージを元に作成された、ペーパークラフトが被写体となっている。

 それら映像作品は、視点を固定したカメラでコマ撮りの手法で動きをつけられ撮影される。そこにもデマンドの写真作品と同様に、事件や現実を傍観する、監視カメラのような目撃者の視点が感じられる。現在の監視防御社会においては、しばしば監視カメラは重大な事故や事件の重要な目撃者であり、証言者でもあることは疑いようのない事実となっている。その意味で、監視カメラの冷徹なまでの眼差しのありようは、実は事件や事故現場をみる我々の視点のありようをトレースしているともいえる。

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