今週末見るべき映画「ローマ法王の休日」

2012年 7月 20日 12:00 Category : Art

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 奇想天外な設定と思う。ローマ法王(日本のカトリック関係の表記では教皇だが、ここでは邦題に合わせて法王と表記)死去のため、新しい法王が選ばれる。ところが、選ばれたばかりの新法王が、プレッシャーを感じてか、ヴァチカンからローマの街に逃げ出す。名優ミシェル・ピッコリの演じる、いささか気弱な枢機卿のメルヴィルは、法王の選挙では、決して本命ではない。ところが、本命と目されていた枢機卿には、意外と票が集まらない。何度かの選挙の結果、選ばれないことを願っていたと思われるメルヴィルが選ばれてしまう。

 「ローマ法王の休日」(ギャガ配給)は、カトリック教徒の頂点に立つローマ法王の「逃走劇」を、戯画化ふうに、さりげないユーモアを散りばめて展開する。別に、カトリック教徒やローマ法王庁を批判した描き方ではない。ローマ法王や、大勢の枢機卿は、聖職者ではあるが、ふつうの人間である。それを、ほのぼのとした愛情たっぷりに、愛おしむように綴っていく。あわてふためくバチカンの報道官や枢機卿たち、新法王の治療に呼ばれた精神科医、逃げ出したメルヴィルが出会う市井の人たちなど、周辺の人間のありようが、丁寧にきめ細かく描かれ、飽きさせない。

 メルヴィルは、かつて舞台の役者を志したことがある。チェーホフの「かもめ」全4幕のセリフをすべて暗記しているほどの人物という設定だ。演じるミシェル・ピッコリがいい。表情の変化だけで、謙虚で気弱な性格を、だから言葉にならない胸のうちを、見事に演じる。思わず、昔読んだ、アンドレ・ジイドの「法王庁の抜け穴」という小説を思い出した。原題は「ヴァチカンの地下室」だが、石川淳の名訳によるタイトルが「法王庁の抜け穴」である。更に映画では、フランシス・フォード・コッポラの「ゴッドファーザー3」や「ダ・ヴィンチ・コード」などなど、法王庁の絡む題材は多い。法王という権威ある立場でも、人間である。弱さ、脆さを持ち合わせている。それが等身大で、控えめに、淡々と語られる。監督のナンニ・モレッティの、まことにうまい語り口だ。


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