物たちを見るというまなざしと体験。『物物』展

2012年 9月 12日 15:00 Category : Art

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 今回会場設営を拝見する機会があり、展示とは、作品をつくったり、あるいは選ぶことと等しく、それを行う人のキャラクターとセンス、日ごろの考え方が反映される仕事だと、完成した展示会場をみてあらためて思った。当然ながらそこには、たくさんの物を見て、そのなかから選びとり、コーディネートをするスタイリストという職能をもつ岡尾さんの、物との向き合い方までもが隅々にまで反映されているのだ。ワクワクするような楽しさとともに、空間に漂う清々しい緊張感のようなものは、物が放つものであると同時に、多分にこのスタイリングという仕事によるところが大きい気がした。

 展示方法としては、テーブルや椅子など、家具の上に置かれ、見ることが丁寧に意識されているのがいい。物たちが置かれたその高さは、子供たちでも自分の目線で見れたり、見下ろしてみることができる高さだ。なかにはアケビの籠がのったローテーブルや、木でできたサイドテーブルなどの、猪熊弦一郎自作の家具の上に展示されている物もある。展示台ではなく、日常僕たちが見慣れた家具の上にこれらが置かれることで、ここが美術館の白い壁のなかであることを知っていても、昔なじみの、懐かしい誰かの部屋に迷い込んだような感覚も味わうことができる。それはコレクションを照らす照明も、暖色系のあたたかな光であることとも関係しているかもしれない。

 その子供たちの目線であることは、子供たちに小さなころから日常的に美術に触れて欲しいという、猪熊弦一郎の考えにもつながっていると僕は思った。ちなみに猪熊弦一郎現代美術館では、高校生以下は無料で入館することができ、いつでも身近に現代美術にふれることができる。

 猪熊弦一郎のコレクションとともに本展のもうひとつの主役は、今回の書籍および展覧会のために撮り下ろされた、ホンマタカシさんの写真だ。手のひらに載るような、小さなサイズの展示品が多いなかで、ホンマさんが撮影した写真は、その実際の物よりも数倍も大きなサイズに引き伸ばされ展示されている。写真の展示方法も、実際の物と対応して展示されているので、その大きさの違いも目に見えて際立ってみえてくる。そのことは、写真は被写体との関係で、等倍に現像されプリントされることのほうが少ないから、なにも不思議なことではないのだけれど、現物と写真を一対一対応でみることができる本展の展示構成では、その差異がひときわ強調されていることにも、つねに写真とは何か、を考えながら写真と向き合っているホンマさんの試みだけに注目してみてみたくなる。写真と被写体との関係については、同館で同時開催中の『ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー』展とあわせてみて、考えていただきたい。

 

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