「私たちは関係性のなかで生きている」エルネスト・ネト インタビュー

2012年 10月 29日 00:00 Category : Art

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 現在、表参道にあるエスパス ルイ・ヴィトン東京で行なわれている現代ブラジルを代表する美術家 エルネスト・ネトのエキシビション『Madness is part of Life』(開催中〜2013年1月6日まで)。

 すでにこの巨大な彫刻を体験した方も多いと思うが、今回は前回のエキシビションレポートに続き、その彫刻作品の「聖堂」で行われた、エルネスト・ネトとの対話をお届けする。身振り手ぶりを交え丁寧に言葉を選びながら、ときに作品の眼下にひろがる東京の景色に遠く視線をはせ語るネト。その言葉から、自身の彫刻作品、そして生まれ故郷であるリオへの思いや願いのようなものを垣間見ることができるインタビューとなった。


―まず、今回の作品のコンセプトから教えてください。

30年前に彫刻をはじめてから自分のコンセプトを守り続けていることが、私自身のコンセプトであるといえます。私がコンセプトというときには、まず彫刻がベースにあります。それは大理石であったり銅であったり、そのかたまりを社会にどのように差し出すことができるのか、それが私がつねに考えていることです。

それと私の彫刻は身体にたとえられることがありますが、物体を考えるときに、目や鼻などのパーツから考えるのではなく、もっと根源的な細胞やDNAなどミクロな世界から私は考えはじめます。私が物体というとき、それは肉体のことなのですが、もちろんこれらの展示を人々が体験するときに、ここがこの物体の足であり手、あるいは胴だとか、それを人間や動物の肉体に置き換えて考えることもできます。人はこの彫刻のなかに入ってきて、人間の肉体とはなんなのか、内臓とはなんなのか、あるいは自分の肉体だけではなく、他の人、動物たち、生き物たちの肉体とはなんなのか、そして地球という物体は何なのか、と考えるきっかけになればと思います。

根源的な話ですが、そのどこに意味を見つけるのかというと、私の場合は「関係性」というところに意味を見いだします。私たちが生きているというときに、それは関係性の中で生きているわけです。この作品であればこの紐とボール、そしてこの彫刻が置かれたスペースです。そのすべての関係は、この空間を覆い尽くす重力や密度でつくりあげられているものです。


―なるほど。毎回タイトルが印象的なのですが、今回のタイトルにこめた意味を教えてください。

それは、私がこの彫刻をつくったときにマッド(=狂気)だったからです(笑)。現在の社会はすべてコントロールされていて、そのコントロールされたシステムのなかにわれわれは生きているわけです。そこでは私たちのなかにある狂気は巧妙に覆い隠されています。私は生きることについて、もっと実感したいといつも思っています。生きることを考えるときに、そこには生と同じように死があるわけですが、私にとっての死は、生きることの結果にすぎません。では、生きることとは何なのかというと、それは個人個人の生を生きることと同時に、自然全体として生きることです。私たちが生きるというとき、この世のなかの生、そのすべてのなかに私たちは生きているのです。それを人は人生というでしょう。私はそのような生を作品で扱っています。

私たちの身体は、60から80兆のDNAの細胞で構成されていますが、それを超す100兆以上のバクテリアが同時に私たちの体内や表皮に存在しています。人間とは、自らを構成する細胞と、その莫大な数のバクテリアとの有機的共同体でもあります。したがって、私たちの身体はミクロのレベルでは大きな物体で、広大な風景であり、それ自体がひとつの宇宙でもあるといえるのです。

今回展示される彫刻というのは、そのような人間の身体と同じように、いわばミクロの世界をマクロに拡大したものです。具体的にはこれは、精子と卵子という、男性的、女性的なものを象徴するふたつのパートが交ざり合ってできたものなのです。


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