篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE by KISHIN

2012年 10月 25日 11:30 Category : Art

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 続く巨大な空間に展示されるのは、「SPECTACLE:私たちを異次元に連れ出す夢の世界」というテーマの作品群。有名人である被写体を、虚実ない交ぜに、それを強調するようにコラージュや複雑な合成などの手法を使って表現した作品から、ワイドな画面いっぱいに集合写真の手法で撮影されたものまで。ひと際大きく引き伸された、篠山自身が役者と一心同体「紀信同体」になるほど惚れ込んで撮影したという歌舞伎のシリーズでは、その舞台をクローズアップレンズでリアリティをもって撮影することで、歌舞伎がもつ幽玄な物語(=虚構)世界の裏側をスペクタクル感満載にあぶり出す。

 来場者が一人として写っていない東京ディズニーランドで、広角レンズで自らも「シノラマン」というキャラクターとなって撮ったシリーズや、ウルトラワイドなレンズで撮影された豊島園プールでの一コマ、多重露光により一枚の写真に複数の後藤久美子を登場させた作品、ドットモチーフのアート作品を生涯にわたって制作し続ける草間彌生の肖像などは、もはやその写真自体が、それが噓か真、演出や夢なのか、その考えや区別さえ無効にする。篠山がいうところの「嘘×嘘は本当になる」とは、写真の虚構性を最大限に増幅させてリアルにみせる、絶対写真というべき縦横無尽さだ。

 一転して、真紅の展示室での「BODY:裸の肉体、美とエロスと闘い」は、'60年代学生時代にライトパブリシティ入社直後からはじまる初期の造形的なヌード・シリーズ「The Birth」から、雑誌や写真集などで幅広い層に衝撃をもって受け入れられ一世を風靡した70年代の「激写」シリーズ、ウラジミール・マラーホフやマニュエル・ルグリといった当代きっての男性バレエダンサーの鍛えぬかれたヌード写真などを展示。

Vladimir Malakhov 1998年

 人気絶頂の最中の突然の衝撃的なヌードの発表で、爆発的にヒットした宮沢りえを被写体とした『Santa Fe』、一人の被写体を一冊の写真集でまとめたヌード写真集accidentsシリーズ中の樋口可南子を被写体とした『water fruit』など、社会現象にまでなった写真集で時代のヌード表現を切り開いてきた篠山紀信ならではの圧倒的な作品が並ぶ。深夜の東京の街角で撮影され、公然わいせつの罪に問われたヌード作品シリーズ「20XX TOKYO」からの作品も展示。篠山の写真はいつの時代もつねにセンセーショナルなものであったことを象徴するような展示構成となっている。相撲、ヌード、男性の肉体美を克明に記録したバレエダンサーたちの肖像を見ていると、本展で篠山は写真撮影の際に被写体たちと向き合う膨大な熱量を、美術館の空間や壁に同じようにぶつけ、写真の力と空間の力を戦わせていることが伝わってくる。

宮沢りえ 1991年

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