「空気のなかに連れていくような体験をつくりだす」エルネスト・ネト アーティスト・トーク

2012年 11月 12日 14:40 Category : Art

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 表参道のエスパス ルイ・ヴィトン東京で開催中の現代ブラジルを代表するアーティスト、エルネスト・ネトのエキシビション「Madness is part of Life」。エキシビション開催に合わせ来日したネトのインタヴューと、エキシビションレビューは以前お届けしたが、今回はエルネスト・ネトの「Madness is part of Life」のために行なわれたアーティスト・トークの模様をお届けする。

 当日は対話のパートナーとして、ルイ・ヴィトン表参道をはじめ、国内での一連のルイ・ヴィトンの店舗の設計などを手がける、日本を代表する建築家の一人である青木淳氏と、2001年横浜美術館アートギャラリーで開催されたグループ展『スペース・ジャック!』をゲスト・キュレータとして企画し、そのなかで日本で初めてエルネスト・ネトを紹介した、現在、広島市現代美術館チーフキュレーターをつとめる神谷幸江氏をモデレーターにむかえ行なわれた。

 アーティスト・トークの模様はUSTREAMを通じてライブ配信もされたので、ご覧になられた方も多いと思うが、ネトの口から直接語られた、今回の作品が制作された経緯や、青木淳氏が設計したエスパス ルイ・ヴィトン東京の空間とのコラボレーション、青木氏が語る建築家の視点からみたネトの作品、そして神谷氏が考えるネトの作品の現代美術における立ち位置などが作家本人を前に語られ、とても興味深いアーティスト・トークとなった。

 神谷氏はまず、「ネトさんの作品のコンセプトにはいつも「ボディ=身体」というアイデアがあり、それをいろいろなかたちで視覚化しています。空間をチューブに導かれながら登っていく今回の作品も非常な驚きでした。そのインスピレーションを可能にした空間を手がけられたのが青木淳さんです。普段は美術館という大きな空間での展示が多いのですが、今回は非常に親密なスペースに展開され、さらに、窓の外には森のように都市が広がる東京らしい景観のなかで、ネトさんのたくましくオーガニックな作品を体験することができる、またとない機会になりました」と本展についての説明をした。

 ネトはつねづね、自身の作品を説明する際に、彫刻であるという。通常、彫刻に用いられる素材は石や粘土、金属やガラス、木材などであるが、近代以降はそれに鉄や合成樹脂なども加わる。彫刻とは、3次元空間のなかで創作が行なわれる美術表現の総体である。ネトの作品は文字通り3次元空間における立体的なものだが、その素材となるのは、薄く軽い布や、かぎ針編みでつくられた紐、あるいはかたちのないスパイスなど、柔らかい素材でつくられたものが多い。神谷氏はそのことに触れ、「柔らかい素材でつくるようになったきっかけは?」とネトにたずねた。

「それは難しい質問です。実際、柔らかい素材ばかりでなく、鉛や針金などを素材にした彫刻もつくっています。私がまだ子どものころに、祖母にかぎ針編みを教わりました。そして初めてバッグのようなものをつくりました。それが私の最初の彫刻作品です。私はそれをとても創作的につくりましたが、そのころは彫刻は固いものでつくる、とは誰も教えてくれなかった。その後、学校で美術について知るようになると、彫刻はかたいものでつくると教えられました。だから、そのときは「しまった」と思いました(笑)。鉄や鉛のようなかたい素材もときに使いますが、私には少し重すぎる。やはり柔らかい素材が好きである。今回の作品も、かぎ針編みで編んでつくったやわらかいネットのなかに、それよりも少しかたいプラスチック製のボールを詰め、布、ゴムなど、収縮性のある素材でつくっています。素材使いもそうですが、私が彫刻作品をつくるときに大切にしているのは、コンセプトのある彫刻作品をどのようにつくるかということです」

「子どものころは、宇宙飛行士になりたいという夢がありました。大学ではエンジニアリングを学び、その後宇宙学を学びたかったのですが、それはかなわず、その後アーティストになりました。だから彫刻をつくるときに、布の変化や、重さやバランスに関わる重力を意識しているのは、思春期のころに宇宙飛行士になりたかったということや、宇宙学を学びたかった、という思いがたぶんあると思います」

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