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東京フィルメックス「木下惠介生誕100年祭」銀座メゾンエルメスでの無料上映も

2012年 11月 5日 15:00 Category : Art

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■50年代
 油の乗り切った50年代は10本、傑作が並ぶ。「婚約指環(エンゲージリング)」は、病気の夫に代わって、宝石店を営む妻(田中絹代)が、夫を担当する若い医者(三船敏郎)に惹かれていく。日本初のカラー映画「カルメン故郷に帰る」は、51年の公開。戦前の、日本映画初のトーキー作「マダムと女房」と並んで、日本映画の歴史を語る際、必ず登場する映画である。東京でストリッパーをしている女性カルメン(高峰秀子)が、故郷の浅間高原のふもとの村に戻ってくる。幼い頃、牛に蹴られて、いささか頭が弱く、人のいいカルメンを演じた高峰秀子の魅力が全編に溢れている。カラー映画のため、撮影には大変な苦労があったらしい。高峰秀子の著書「わたしの渡世日記」によると、「何を、どう撮れば、どう映る、かを、六十人のスタッフのだれ一人として分からない、などという奇妙な仕事が、この世にあるだろうか」と記している。カルメンのセリフにこうある。「芸術的ってとても難しいの。いくら人気を獲得したって、仕事を精神的理論づけるとけっこう負けちゃうの」。まさに、木下監督の思いである。映画は大ヒット、翌52年には、続編にあたる「カルメン純情す」が公開される。もちろん、今回も上映される。

「婚約指環」© 1950 松竹

 53年公開の傑作が「日本の悲劇」だ。望月優子扮する戦争未亡人が、旅館の女中として働いているが、子供たちからは冷たくされる。当時のニュース映像を交えてのドラマから、戦争の悲劇が浮かび上がる。声高に戦争批判はせず、戦争で視力を失った、愛称ソンキの岡田(田村高廣)に、一枚の写真から、「この写真はなあ、見えるんじゃ」と語らせる「二十四の瞳」は、木下作品の代表作。泣く映画ではあるが、戦前戦後の子供たちと、高峰秀子扮する女教師の生き方から、当時の「日本そのもの」を深く描いた傑作だ。

「日本の悲劇」© 1953 松竹

 50年代は、詩情豊かな作品が多い。伊藤左千夫の小説「野菊の墓」の映画化は、55年の「野菊の如き君なりき」。封建的な村社会での叶わぬ恋の行方が、絶景の信州を舞台に綴られる。「夕やけ雲」は、船乗りになる夢を持ちながら、家業の魚屋を継ぐかどうか悩む少年のドラマで、現実の厳しさに胸痛む作品。深沢七郎の同名小説「楢山節考」は58年。老女が山に置き去りにされる姥捨山の伝説に、現代を象徴する。全編セット撮影、長唄や浄瑠璃を用いた前衛的な演出に、木下美学がさえ渡る。田中絹代の凄絶な演技が話題になった。59年の「風花」は、岸惠子、久我美子、有馬稲子が主演。信州の農村での身分違いの恋愛を、哀感を込めて描く。時間軸が交差、後の映画に表現の多様性をもたらす。59年、タイトルがたしか流行語になったと記憶しているのが「今日もまたかくてありなん」。平凡な家族にのしかかる理不尽な圧力に、静かだった男が立ち上がる。高橋貞二が力演、まるでヤクザ映画のような展開だが、庶民の悲哀が色濃く出た佳作だ。

「野菊の如き君なりき」© 1955 松竹

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