「イスラエル映画傑作選」 東京フィルメックスレポート

2012年 11月 20日 12:00 Category : Art

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 過去の東京フィルメックスでも、たびたびイスラエル映画の秀作、傑作を上映してきた。イスラエルは1948年の建国、その歴史は浅いが、紀元前から、宗教や民族が入り組んだ、複雑な歴史のある場所である。いまは、世界じゅうで活躍していたユダヤ人たちの国だが、アラブ人勢力のパレスチナ自治政府との衝突は、まだ続いている。

 複雑な歴史や宗教、国家事情を背景に、イスラエルの映画人は、幅広く、国家、社会、人間を描き続けている。その視点は、幅広く、鋭い。11月23日(金)から開幕の第13回東京フィルメックスでも、粒よりのイスラエル映画が多く上映される。すでに本欄の「上映作品発表、第13回東京フィルメックス」、「特別招待作品」の2つでレポートしたように、特別招待作品として、アモス・ギタイ監督の新作「父へのララバイ」(2012年)と「カルメル」(2009年)が上映される。また、次回、詳細にレポートする予定のコンペティション作品に、シャロン・バルズィヴ監督の「514号室」(2011年)と、アミール・マノール監督の「エピローグ」(2012年)のイスラエル映画が2作品、上映される。

作品:「カルメル」

 2012年は、日本とイスラエルが外交関係を樹立して60年になる。ここ数年、民族や宗教をめぐっての長い歴史の一端を、映画で表現する動きは、まさに豊穣そのもの。このところの世界じゅうの映画祭で、イスラエルの映画の受賞が相次いでいることからも、その豊かさが理解できる。2005年、第58回のカンヌ映画祭では、アモス・ギタイ監督の「フリー・ゾーン~明日が見える場所~」で、ハンナ・ラスロが女優賞を受賞した。これは、2005年の第6回東京フィルメックスでも上映され、評判を呼んだ。

 2007年、第8回東京フィルメックスのグランプリは、同年のカンヌ映画祭にもコンペで上映された、ラファエル・ナジャリ監督の「テヒリーム(詩編)」だった。同年の東京フィルメックスでは、特別招待作品としてアモス・ギタイ監督の「撤退」、コンペ作品としてエドガー・ケレット、シーラ・ゲフェン監督の「ジェリー・フィッシュ」も上映された。「ジェリー・フィッシュ」は、同年のカンヌ映画祭では、最も優秀な新人監督に送られるカメラ・ドールを受賞している。2008年、アリ・フォルマン監督のアニメーション「戦場でワルツを」は、アニメーション作品としては初めてと思うが、アカデミー賞最優秀外国語映画賞にノミネートされ、受賞が最有力と思われていた。結果は日本の「おくりびと」が受賞したのは、ご存知の通り。同年の第9回東京フィルメックスでは、「バシールとワルツを」というタイトルで上映された。同作は、2008年の第66回ゴールデングローブ賞とフランスのセザール賞では、外国語映画賞を受けている。

 2010年、第23回の東京国際映画祭のグランプリは、ニル・ベルグマン監督の「僕の心の奥の文法」だった。1967年の第3次中東戦争前の平和なイスラエルを舞台に、少年アーロンの心のうちの抵抗を、象徴的に描いた傑作だ。2011年、女流監督ルーシー・シャツは、パートナーのアディ・バラシュと共同監督で「密告者とその家族」を撮る。イスラエルに情報を流していたパレスチナ人が、裏切り者としてパレスチナを追われる。イスラエルで生きることの厳しさを訴えたドキュメントは、山形国際ドキュメンタリー映画祭で、大賞を受けている。

 こういった傑作群の萌芽として、今回の東京フィルメックスは、イスラエルの60年代作品を3本、1986年作品1本の計4本を「イスラエル映画傑作選」として上映する。いまやハリウッドで、大プロデューサーとして君臨するメナヘム・ゴーラン監督のデビュー作「エルドラド」(1963年)が登場する。テルアビブを舞台に、まっとうな道を歩もうとする男が、過去のしがらみにとらわれていく過程を活写する。ロジャー・コーマンのアシスタントを務めただけあってか、犯罪映画の結構を持つが、そのアート感覚は、1987年に作られたジョン・カサヴェテスの「ラヴ・ストリームス」やジャン・リュック・ゴダールの「リア王」などに、深い影響を与えたと言われている。メナヘム・ゴーランという映画作家を語る上では、必見の作品というべきだろう。

作品:「エルドラド」

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