「イスラエル映画傑作選」 東京フィルメックスレポート

2012年 11月 20日 12:00 Category : Art

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 イスラエルという国を愛してやまないエフライム・キション監督の、風刺精神にあふれ、ブラック・ユーモアで綴った作品が「サラー・シャバティ氏」(1964年)だ。1924年、ハンガリー生まれのエフライム・キションは、大学で美術史を専攻、いろんな職業を経て、第2次世界大戦中には、ドイツ、ロシアで強制収容所に入れられる。

 1949年にイスラエルに亡命、イスラエルの新聞に、風刺やユーモアたっぷりのコラムを数多く書いた才人である。日本でも、「キションのベスト・ジョーク」(実業之日本社 石原佐知子訳)など、何冊かの翻訳が出版されている。後に、映画監督となり撮ったのが本作である。製作は、メナヘム・ゴーラン。イスラエルに移住した家族が、なんとかして大きい家に住もうと、大金を得ようとする。その顛末が、ユーモラスに描かれる。「キションのベスト・ジョーク」のあとがきで、エフライム・キションは、「”イスラエル”それは、僕らユダヤ人に人間の尊厳を再び与えてくれた国だ」と書き、「イスラエル人はこの故郷を、二千年の民族分散にも決して失わなかった愛で、愛しているのだ」と書いている。イスラエル映画ファンには必見の作品。

作品:「サラー・シャバティ氏」

 1967年、カンヌ映画祭で、オデッド・コットレルが男優賞を受賞したのが「子どもとの3日間」だ。監督はウリ・ゾハル。ちなみにこの年のカンヌの審査員特別大賞は、ミケランジェロ・アントニオーニの「欲望」やジョセフ・ロージーの「できごと」などの3作品だった。ウリ・ゾハルもまた、イスラエル映画の黎明期を代表する監督のひとり。

 若者の微妙な心の動きを静謐に描いた「エルサレムの秋」など、イスラエルを代表する作家アブラハム・B・イェホシュアの短編小説の映画化だ。作風はいたって自然、難解ではない。元恋人の子どもを預かった男の3日間を描くが、揺れ動く男の心理を、きめ細やかに見せる。この秋、ユダヤ人会議で来日したアブラハム・B・イェホシュアの作風に、巧みに寄り添ったウリ・ゾハルのタッチが楽しめる一作だ。

作品:「子どもとの3日間」

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