現代の神話を紡ぐ、ブラジル現代写真

2012年 12月 6日 11:50 Category : Art

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 ブラジルと言えば、まずはサッカー。そして、サンバやボサノヴァの陽気なイメージ、映画『シティ・オブ・ゴッド』のような激しさ、パウロ・コエーリョの小説『アルケミスト』にあるような不思議な世界……。挙げただけでも一貫しない。それもそのはず、ブラジルは、20世紀の初めから世界各地の移民を受け入れて発展してきた多人種・多民族国家だ。さまざまなバックグラウンドを持つブラジル人たちは、メスチッソ(混血人種)としてのアイデンティティを作り上げてきた。

 しかし、一見バラバラのように見える文化のの根底には、土地に根ざした風習、宗教や荒々しい自然からの影響を汲んだ「神話性」ともいうべき、大きな物語が潜んでいるのだ。

クラウディア・アンデュジャール《無題 「家」シリーズより》1974年、ゼラチン・シルバー・プリント

 現在、資生堂ギャラリーで写真展「神話のことば ブラジル現代写真展」が開催中だ。参加する7組のブラジル人作家は、30代~80代と非常に年齢に幅がある。本展のゲストキュレーターを務めるブラジル人キュレーターのエーデル・シオデッドは、彼らの写真についてこう語る。

「写真の世界では、1950年代からドキュメンタリーフォトの分野において、ブラジル人の多様性を探る試みがされてきた。マルチカルチュラリズム(多文化主義)、そして風土や気候、動植物相からの影響は、本展でセレクションされた写真家たちのように作家たちのドキュメンタリズムと実験主義的な作品において重要なテーマとなっている」

クラウディア・アンデュジャール《無題 「Reahu」シリーズより》1974年、ゼラチン・シルバー・プリント

 冒頭の2点は、クラウディア・アンデュジャールの作品。1931年生まれで今年81歳になる写真家だ。スイス人の母とハンガリー人の父を持つ彼女はスイスに生まれ、幼少期はルーマニアとハンガリーで過ごし、第2次大戦中は母とオーストリアに避難した。ハンガリー系ユダヤ人の父はナチに拘束されキャンプへと送られてしまう。戦後にアメリカに移住し、ニューヨークの大学で人文学について学んだアンデュジャールは、1956年に自身のプロジェクトを行なうためブラジルへと移り住み、現地の先住民族の写真を撮り始め、「Life」や「Fortune」「Aperture」等の雑誌にフォトジャーナリズム作品として寄稿する。

 彼女がヤノマミ族に出会ったのは、1970年代初頭。ヤノマミ族は、アマゾンの熱帯雨林からオリノコ川にかけて住む先住民族であり、狩猟と採集を主な生活手段とし、神や精霊と非常に近接な生活をしており、祭礼や儀式が日常の一部になっている。アンデュジャールの作品では、その場で行われている儀式を単に記録するだけではなく、長時間露光やオイルランプなどを使い、ミステリアスなヤノマミ族の儀式に漂う「空気」を可視化する。それは、演出のひとつと言えばそうなのだが、彼女が現地で感じた目に見えない「何か」を、決して過剰ではなく、映し出す試みがなされている。

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