コンペティション9作品の授賞式-第13回東京フィルメックス 

2012年 12月 27日 15:00 Category : Art

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 11月23日(金)から12月2日(日)まで開催された第13回東京フィルメックス。今年もまた、優れた映画が数多く上映され、至福のの時間だった。12月1日、クロージング作品、特別招待作品のバフマン・ゴバディ監督「サイの季節」の上映に先がけて、コンペティション9作品の授賞式があった。

 あらかじめ、9作品はすべて見ていた。いずれもキャリアの浅い新進監督の作品たち。とてもこれが長編デビューとは思えないほどの手だれぶりもあれば、意あって力足らずの若々しい作品もある。メジャー作品と違って、ふんだんにお金をかけた映画ではないけれど、映画への愛に満ち、どの作品も個性たっぷり。さまざまな映画表現を楽しませてもらった。9作品のうち、テーマ、表現、映画の完成度などで魅せられたのが、中国の2本、ハオ・ジェ監督の「ティエダンのラブソング」と、ソン・ファン監督の「記憶が私を見る」。そして、イスラエルの2本、シャロン・バルズィヴ監督の「514号室」と、アミール・マノール監督の「エピローグ」の4本だった。

 受賞作は3本。学生審査員賞は、日本の高橋泉監督の「あたしは世界なんかじゃないから」。授賞理由は、「エネルギーが炸裂する普遍性、他人事と思われたシーンが私たちの体験として感じられた」。次いで、審査員特別賞が発表された。中国の「記憶が私を見る」だ。会期中、仲間うちでも前評判の高かった映画で、期待通りの力作。北京で働いているヒロインが、夏、南京の自宅に帰省する。両親や兄の家族との会話から、現代中国の家族の姿が浮き彫りになる。監督のソン・ファンは、まだ若い女性。エンドロールで謝意が示されたユー・リクウァイ監督と同じく、ベルギーで映画修行、その後、北京電影学院監督科を卒業する。女性らしい、きめ細やかな視点から、日常のささいな会話や出来事をスケッチ、人の暮らしのさまざまな側面が露わになる。授賞理由の「人間の営みの大切さを伝え、生きることの意味を問うている」に、素直に喜ぶ。「嬉しすぎる。賞金が出ることを知らなかった。これで、俳優たちに少しギャラが払える。人間はなぜ生きるのかの意味を問うていると評されて、胸に響いた」とソン・ファン。

作品:「記憶が私を見る」

 最優秀作品賞は、イスラエルのアミール・マノール監督の「エピローグ」。建国の理想に燃えた世代は、すでに老齢。現在のイスラエル事情から、取り残された人たちも多い。老人は、新たなコミュニティ作りに奔走するが、空しい努力である。暮らしに絶望した老夫婦は旅立つ決意を固める。しかし、ささやかではあるが、次世代への希望が、ラストであざやかに示される。老人が主役になる映画は、世界じゅうで作られているが、時代に翻弄され、国家に裏切られた世代を描いた「エピローグ」は、次世代に託した「プロローグ」と言えるかも知れない。アミール・マノールは、すでにいくつかの映画を撮っているが、これが長編監督デビュー作となる。そのジャーナリスティックな作劇術はすでに手だれ。「興奮し、光栄に思う。映画を娯楽と考える人もいるが、映画はよりよい未来を作る道具と思う。いまや、ボーダーを超えて、映画は世界を変えることが出来る」と語る。「お金がすべての社会は悲しい」との祖母の言葉から、イスラエル建国の歴史を語りたかったと監督。さらに、自作を、「歴史の犠牲がいまの老人たち。人生の意味についての映画、人生を反省する記憶の映画」とコメントする。

 審査委員長のSABUが総評を述べる。「破壊する快感の映画が多いなか、多くの人がフィルメックスに足を運んでくれ、まだまだ捨てたものではない。審査ではいろんな意見が飛び交い、盛り上がり、楽しかった。フィルメックスは、大事な映画祭だ」。

作品:「エピローグ」

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