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今週末見るべき映画「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」

2013年 1月 31日 11:30 Category : Art

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 いわゆる「グランド・ホテル」形式の映画である。ある限られた環境、状況で、さまざまな人間群像を描くスタイルのお手本が、1932年のアメリカ映画「グランド・ホテル」だった。グレタ・ガルボが落ちぶれたバレリーナ、倒産寸前の会社に雇われた速記者がジョーン・フォンティーン、借金まみれの自称男爵がジョン・バリモア、一生の思い出にと有り金を使い果たそうとする男がライオネル・バリモア。豪華なホテルの空間で、それぞれの人生が切り結ぶ傑作だ。

 1939年のフランス映画、ジュリアン・デユヴィヴィエ監督の「旅路の果て」もグランド・ホテル形式。過去の栄光に包まれた老俳優たちが、南フランスの養老院を舞台に、現実の悲惨さに直面する。このほど公開の映画「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(20世紀フォックス映画配給)もまた、「グランド・ホテル」形式の結構を持つ。若いころには思いもしないことだが、人生のほぼ最後のひとときを、どこでどのように過ごすか、そんなことを考えるようになる年齢は、だれしもに存在するのだろう。登場する7人の老人たちは、それぞれの事情を抱えて、インドのジャイプールにやってくる。格安で、長期滞在が出来るという、豪華なホテルを目指して。

 死んだ夫の借金のため、自宅を手放さざるを得ない老女。インドでの秘めた過去を持つ元判事。喧嘩ばかりの定年すぎの夫婦。人種差別丸だしの老女。結婚離婚を繰り返す老女。若い女性と異国での生活を夢見る初老の男。この7人は、ホテルで、町なかで、それぞれが知り合い、さまざまな会話を交わす。映画は、彼らの人生のほぼ最後のひとときを、どのように過ごすのかを、上質のユーモアを交え、いささかシニカルに綴っていく。人物の描き方が軽快で、巧み。わずかなシーンのいくつかを重ねるだけで、この人物がどのような人物なのか、どのように変化しつつあるかが、過不足なく示される。「ゆりかごから墓場まで」の理想が潰えたイギリス社会である。練れた脚色が、なぜ今、イギリスの老人たちがインドに向かうのかを提示、イギリス社会の現実も暗示して、飽きない。


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