今週末見るべき映画 「ビル・カニンガム&ニューヨーク」

2013年 5月 16日 08:00 Category : Art

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 スタジオの思い出を語るビル。「帽子店もここにあり、かつてはジンジャー・ロジャースやマリリン・モンローも来た。8階のスタジオでは、エンリコ・カルーソーが最初のアルバムをレコーディングした。エディッタが、動物の謝肉祭からの白鳥を踊るのを、アンディ・ウォーホルが撮影した」。ビルは思う。「転居先は、キッチン、バス、トイレ付きだが、掃除しなきゃならない。どんなにいい部屋でも、キャビネットを置くだけだ。街へ出て、写真が撮れればいいだけで、引っ越しなどに人生の邪魔はさせない」。

 ニューヨーク・タイムズ紙のコラム「イブニング・アワーズ」は、単なるパーティ記事ではなく、ニューヨークの驚くべき人物相関図で、その壮大な記録だ。ビルのデスクには、招待状が山のように積まれているが、慈善パーティを最優先にする。作家のトム・ウルフが言う。「ニューヨークは住みやすい街だとは思わないが、面白いのは、集まる人間の多くに、野心があることだ」
 ビルは、被写体を差別しない。自転車配達の人、ウォール街のキャリアウーマン、ニュー・セレブ、ニューポートの裕福だった移民、どれもが、ビルにとっては、ニューヨークの多彩な人生のひとつにすぎない。カトリーヌ・ドヌーヴに群がるパパラッチがいる。ビルは言う。「撮るかどうかは、ファッション次第。そもそも役者はあまり知らない。テレビもないし、映画も見ない。パパラッチにはなれないね。誰かを苦しめるマネはしたくない」と。

 ファッションとは、身体に装いを凝らす芸術だ、とビルは考えている。自らのブルーの作業着を指して、「こんな服装ばかりじゃ、世の中はさぞ退屈だ。ブルーの作業着は、パリのデパートで20ドルで買った。もとは、街路清掃人の作業着で、カメラと擦れても大丈夫」。いまなお、ビルは、ニューヨークで、写真を撮り続けている。


「ビル・カニンガム&ニューヨーク」
5月18日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
©New York Times and First Thought Films.

文/二井康雄

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