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今週末見るべき映画 「三姉妹〜雲南の子」

2013年 5月 23日 11:50 Category : Art

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 一昨年、中国のワン・ビン(王兵)監督の「無言歌」を見た。1960年代、ゴビ砂漠の収容所を舞台に、囚人たちの過酷な実態をドキュメンタリー・タッチで描いた劇映画だが、反右派闘争の悲劇が、徹底的に伝わる傑作だった。ほぼ同じ頃、「ワン・ビン・レトロスペクティヴ」が開催され、「鳳鳴ー中国の記憶」を見た。

 反右派闘争の悲劇を生き抜いた老女、鳳鳴の語りのみを、3時間を超える長尺で記録したドキュメンタリーだ。いまの中国に、このような、いわば反権力、反政府映画を撮る作家がいることに驚いた。国家検閲とは関係のないところでの仕事だから、可能だったのだろう。「無言歌」は、フランスとベルギーの出資で、「鳳鳴ー中国の記憶」は、フランスの出資である。中国での公開は初めかから意識していない。ワン・ビンは、残したい、撮りたいと思う歴史と現実を撮り続けているだけである。

 昨年の東京フィルメックスで上映され、話題を呼んだワン・ビンの新作ドキュメンタリー「三姉妹~雲南の子」(ムヴィオラ配給)が、このほど公開される。舞台は、中国で最も貧しいといわれている雲南省の奥地、約80戸が暮らす標高3200メートルにある村だ。10歳、6歳、4歳の、まだ幼い姉妹がいる。母親は家出、父親は出稼ぎで不在。長女は、母親代わりに、妹たちの世話をする。食事は、主に、祖父や伯母の厄介になる。長女は、豚や羊、鶏などの世話をし、畑仕事を手伝う。父が、出稼ぎから戻ってくる。父と娘たちは、町で暮らすことを考えるが、経済的な事情もあって、長女は村に残ることになる。

 麺を茹で、じゃがいもを食べる。服は、ほぼ着のみ着のまま、布団も汚れている。靴はボロボロ。カメラは、そういった貧しい暮らしの日常を、淡々と写していく。高い山地である。もやがかかり、風は吹き荒れる。冬はさぞかし寒いと思う。このような場所でも、人は住み、生きている。

 上映時間は2時間33分、長くは感じない。効果音や、余計な説明は一切、ない。改革開放、経済成長を遂げつつある中国の片すみの現実を、ただ提示するだけである。資料によると、撮影された村は、雲南省の政策で、貧困を解消するために、全村移住が決まっているという。2013年2月現在、いつ、どこに移住するかは未定、村人たちにはなにも知らされていない。


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