今週末見るべき映画「メキシカン・スーツケース」

2013年 8月 22日 12:00 Category : Art

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スペイン内戦を描いた傑作映画は多い。外国人の視点からではあるが、古くは、アーネスト・ヘミングウェイの原作を、サム・ウッドが監督、ゲーリー・クーパーとイングリッド・バーグマンの出た「誰が為に鐘は鳴る」や、ケン・ローチ監督の「大地と自由」などなど、いずれも傑作だ。

「メキシカン・スーツケース」(フルモテルモ、コピアポア配給)は、スペイン内戦を取材するため、外国から来た若い写真家の残したネガが、2007年に発見されたことから始まるドキュメンタリーだ。若い写真家とは、ハンガリーのロバート・キャパ、ドイツのゲルダ・タロー、そして、ポーランドのデビッド・シーモア”シム”の3人で、いずれもユダヤ人だ。3つの箱に納められたネガは、ロールで126本、枚数で4500枚。いずれも、スペイン内戦時に撮られた、歴史的な証言と言える写真ばかり。

©212 Berlin/Mallerich Films

スペイン内戦から70年、メキシコで発見されたネガは、「メキシカン・スーツケース」と呼ばれる。パリにあったキャパの暗室から、多くのネガが消えた話は、昔から伝えられている。そして、どこかに存在するはずだとも。キャパの弟であるコーネル・キャパもまた、兄の残したネガを探し続けていた。発見されたネガは、数奇な運命を辿る。スペインからメキシコに亡命した多くのスペイン人とともに、ネガもまた、大西洋を越える。よく出来たドラマ以上の興奮である。

1936年のスペイン。共和派が選挙で勝利するも、フランコ率いる右派と共和国政府が真っ向から対立、内戦状態となる。キャパたちは、共和軍に従軍、撮影した多くの記録写真は、世界じゅうに発信される。

映画は、キャパ、タロー、シムを知る人たちの証言と、内戦を生き抜いた人たち、内戦で行方不明になった人たちを先祖に持つ人たちのインタビューで構成される。そして、合間に、キャパたちの撮った写真が、効果的に挿入される。

写真は、パリで焼き付けられる。焼いたのは、チーキー・ヴァイスという、キャパの友人である。ネガが発見されたのは、メキシコである。なぜ、メキシコなのか。共和派は敗退を余儀なくされる。フランコの手から逃れるには、亡命しか道はない。メキシコが、スペインからの亡命者を受け入れたのだ。

いまようやく、内戦に従軍した人たちの子の世代、孫の世代が、内戦の意味を探ろうと立ち上がっている。3人の残した多くの写真と、内戦を語り始めたスペイン人の証言から、内戦の歴史、記憶が、明るみに出始めている。

©Magnum Photos/

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