今週末見るべき映画「メキシカン・スーツケース」

2013年 8月 22日 12:00 Category : Art

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タローの死後、その作品の殆どは、キャパの作品とされた。シムの作品もまた、キャパの名で表記される。「崩れ落ちる兵士」の写真が出る。キャパが有名になり、ほかの証言者は、その光の影に隠れてしまう。

居間にピカソの「ゲルニカ」を飾っている老女は語る。「避難所から逃げる。雪や雨のなか、山を越え、歩き続ける。1938年暮れから翌年にかけて、ピレネーを越える。共和派は敗退し、フランコからの弾圧が続く。食べ物、水、住む場所もなかった」と。

キャパたちの撮ったネガの入っていたケースは、複数の人の協力で、海を渡る。忘れさられているのが、暗室助手だった人物の果たした役割だ。暗室で働く男が、何かに光を当てたという事実は、完璧な暗喩と言える。

パリのキャパの暗室では、キャパと仲のよかったチーキー・ヴァイスがひとりで働いていた。人前に出ず、目立つのを嫌がった。チーキーは、ネガのすべてに番号と題名をつけて、きちんと整理した。「整理したネガの袋は、父が作った」と、チーキーの息子が話す。

フランス。海辺のアルジュレス・シュル・メール。フランス政府は、ここにスペイン人を数万人、囲い込んだ。飲む水、食べ物はなく、最初の数週間で、1万5000人が死んだ。1934年に就任したメキシコのラザロ・カデルナス大統領は、資金や、2000万発もの弾薬を提供し、共和国を支援した。メキシコは、亡命を望むスペイン人をどう支援できるかを考えた。大統領は、「メキシコ行きを望むスペイン人を歓迎する」と声明。船はジブラルタル海峡を通りすぎる。目の前が祖国スペインである。

1940年、フランスが降伏。チーキーはパリを出る。パリにいれば、自分の身も危ない。メキシコが亡命者を受け入れると知って、メキシコ大使館に駆け込む。チーキーは言う。「スペインのロバートからのフィルムを私が焼き付けた。1939年、ドイツ軍がパリに侵攻。ネガをすべてリュックに入れて、自転車でボルドーに行った。メキシコに渡る乗客に託すために」。

©Magnum Photos/

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