今週末見るべき映画「ムード・インディゴ~うたかたの日々~」

2013年 10月 4日 17:00 Category : Art

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もう20年近く前、「The Essential a salute to duke ellington」という輸入盤のCDを買った。タイトル通り、いろんなジャズメンが大御所のエリントンにちなんだ曲を唄い、演奏する。ビリー・ホリディの唄う「ソリチュード」、ウディ・ハーマン楽団の「サテン・ドール」などが収録されている。最後を飾るのがエリントン楽団の演奏する「A列車で行こう」だ。このCDでの聴きものは、ギターのケニー・バレルが弾く「ムード・インディゴ」。静謐なサックスに、バレルのブルージーなギターが重なる。

この「ムード・インディゴ」をタイトルに、1946年に書かれたボリス・ヴィアンの小説「うたかたの日々」を原作にしたフランス映画が「ムード・インディゴ うたかたの日々」(ファントム・フィルム配給)だ。原作には、エリントンの音楽があちこちに出てくるので、アメリカに一度も行ったことのないヴィアンが、いかにエリントンを敬愛していたかが分かる。


映画では、冒頭から「A列車で行こう」が流れ、カクテルピアノでカクテルを作るシーンで出てくる曲は、セリフで「ブラック・アンド・タン・ファンタジー」と、ピアノで弾かれるのは「キャラバン」(原作の新潮文庫「日々の泡」では「恋なき恋」となっている・曾根元吉訳)だ。また、「ソフィスケイテッド・レディ」に、ヒロインの名は「クロエ」と、まさにエリントン尽くしである。

イメージの変貌が著しい文章、豊饒なイメージで貫かれた原作を、きちんと映像化するのは不可能と思っていたが、過去に、フランスで「うたかたの日々」と、日本で「クロエ」と映画化されている。どちらも未見だが、そう評判にならなかったことを考えると、うまく映画にできなかったものと思われる。

このほどの監督は、ミシェル・ゴンドリーである。かつて、「エターナル・サンシャイン」や「恋愛睡眠のすすめ」、本欄でも紹介した「僕らのミライへ逆回転」を撮った監督である。幻想的なイメージが続出、不思議な映像を撮り続けている映画作家の一人だ。ゴンドリーは、10代で小説「うたかたの日々」と出会う。以後、いつか映画にと考えていたに違いない。

事実、本作は、原作の幻想的なイメージを、ことごとく、軽快に、美しく、華麗に、そして、まことにシリアスに再現する。ウナギの料理、カクテルピアノ、雲に乗る恋人たち、人体で暖めると成長する銃身…。

レーモン・クノーが言うように、ヴィアンの原作は「悲痛な恋愛小説」ではあるが、単なる恋愛小説ではない。お金を持つことの意味や、人間が組織と関わった結果、労働することの意義にまで、深く踏み込んでいる。これはもう、文明批評。人間が人間であろうとする状況を、踏みにじる権力の存在にまで、ヴィアンは迫っている。

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