今週末見るべき映画「ハンナ・アーレント」

2013年 10月 24日 13:40 Category : Art

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昨年の東京国際映画祭のコンペティション部門で上映され、硬派の映画ファンを魅了したのが、「ハンナ・アーレント」(セテラ・インターナショナル配給)だ。ちょうど1年、このほどの公開となった。

女性哲学者ハンナ・アーレントは、ドイツ系のユダヤ人。第二次世界大戦のさなか、1941年、ナチスの強制収容所を脱出、その後、アメリカに亡命する。

今週末見るべき映画「ハンナ・アーレント」メイン画像


1960年、ナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンが、逃亡先のアルゼンチンで逮捕される。アーレントは、アイヒマンの裁判を傍聴、そのレポートを週刊誌の「ザ・ニューヨーカー」に発表する。5回の連載で、アイヒマンの裁判についてのアーレントの考えを述べた記事は、第1回から、多くの非難を浴びる。アーレントは、アイヒマンを極悪非道な犯罪者ではなく、平凡な人物であると考える。結果、多くのユダヤ人からの批判が、アーレントに殺到する。

映画は、当時のアイヒマンの裁判の実写フィルムが使われて、臨場感たっぷり。2012年に作られたドイツ、ルクセンブルグ、フランスの合作になる。ドイツは、いまだ、映画という媒体で、戦争の意味を問いかけ続けている。

いったいに、戦争で勝った国が、負けた国を裁くことができるのか? 勝った国が正義で、負けた国が悪なのか? いつも思うことだが、戦争に正義も悪もないはず。ナチス・ドイツだけが、悪ではないはず。ドイツ敗戦後のニュールンベルグ裁判しかり、極東軍事裁判(東京裁判)しかりである。右や左の思想ではない。なぜ、国と国が戦争するのか、人間と人間が殺しあうのか。単純な疑問に、アーレントは答えを提出する。諸悪の根源は、人間が思考を停止し、立場上、命令に従うだけの人間となること。つまり、人間としての善悪の判断思考の停止が、悪や暴力、大量殺人を生むことを、ほぼ半世紀前から訴えていた。

ナチスの戦犯アドルフ・アイヒマン。「ハンナ・アーレント」では、当時のアイヒマンの裁判の実写フィルムが使われて、臨場感たっぷり。

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