現代アートの最先端から次世代の「視点」を見る、森美「六本木クロッシング2013展」

2013年 10月 31日 16:00 Category : Art

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今回の展示で一番センセーショナルな作品であった。小泉明郎(1976-)は映像と演劇的な法則を用い、人の感情の奥底にある潜在的な欲求や願望を露にする作家である。こういうと普通の映像作品に思われそうだが、小泉の作品は違う。圧倒的なプレッシャーをかけ人格が崩壊していく様子をも映像におさめる。その様子は演技による感情のコントロールを軽く飛び越え、鑑賞者の心に強く突き刺さる。今回の作品は、思わず凍りついてしまい、映像の前にしばらく立ち尽くしてしまった。作品の前にも掲示されているように、非常に刺激が強い作品なので観賞するには、それ相当の覚悟が必要であることを最初にお伝えしたい。

《最後の詩》は表裏2面スクリーンで構成された映像作品だ。一方では、東京の繁華街や歓楽街、電車の中や右翼のデモの様子といった都会の猥雑な風景が投影され、その反対側では覆面をした男女による「最もダークな告白」が繰り広げられる。小泉自身はインタビュアーとして声のみが流れている。ダークな告白の内容は、浮気や友人への裏切りに始まり、人間不信、選民意識、性的倒錯、そして殺人衝動にいたるまで。単なる好奇心で聞き耳を立てられる週刊誌的な内容ではなく、思わず耳を塞ぎたくなるようなものもある。また、これらの音声は、テキストの内容をそのままに小泉が何年もかけて集めてきた街のフィールドレコーディングの音で置き換えられる。怖いのは、彼らの告白そのものなのではない。そうした感情は誰もが持ちうるものだということだ。そうした気持ちを抱えたうえで、人びとは日常生活を滞りなく送っているという現実だ。小泉は、そうした未だ見ぬ感情を映像で私たちの前に現出させることで、鑑賞者自身との対話を促す実験をおこなっているのだ。


ニューヨークを拠点に活動するパフォーマンス作家・荒川医(1977-)と、東京やニューヨークなどで活動をするペインター・南川史門(1972-)による共同映像プロジェクトである。「絵画の物質的な存在は、今日、世界的に美術史が書き直されていることとどのような関係があるのか」を問う。7編の映像からなる物語は、荒川が南川の初期に制作した抽象絵画をパリの街に連れ出すというロードムービーとして展開され、その脇役としてハンガリー生まれの抽象画家シモン・アンタイの作品が登場する。荒川は映像の中で、これまでのパフォーマンスでもおこなっていた手法で、絵画作品自体を移動させたり、人が絵画を持って動き回るアクションを加えることで、絵画作品が映画の主役となりさまざまな出会いが起こる。南川史門とシモン・アンタイ──英語読みでHantai、ハンタイと読む、お互いの名前の関係もウィットに富んでいる、という絵画というフィールドは同じものの一見かけ離れた文脈にいる二人のペインターが、絵画の歴史のなかでどのように交錯するのか、ぜひ映像を最後まで見てほしい。

《パリス・アダプテッド・ホームランド》2013 映像
写真提供:森美術館


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