今週末見るべき映画「アクト・オブ・キリング」

2014年 4月 11日 17:00 Category : Art

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これはもはや、ドキュメンタリー映画というより、「事件」である。「アクト・オブ・キリング」(トランスフォーマー配給)は、かつて、日本の政府、マスコミが、ほとんど伝えなかった、1965年、66年のインドネシアにおける「共産主義者」虐殺の事実を再現する。再現にあたってのメンバーは、実際の加害者たち。

映画の資料に、インドネシア人権委員会はこう書く。「インドネシアという国を、本当の民主主義に変えようと思うのなら、現代史上に築かれた恐怖と抑圧とを認識すべきである。『アクト・オブ・キリング』ほど効果的にそれを成し遂げた映画、あるいはアートは他には存在しない」。


60年代のインドネシア。100万人規模の虐殺があった。実行した人たちは、いまなお、国民的英雄だという。いままでに、政治的な暴力を多角的に研究してきたアメリカの短編映画作家ジョシュア・オッペンハイマーは、インドネシアでの虐殺を取材していたが、被害者の関係者への取材を、当局から妨害される。

そこで、取材対象を、加害者である人物たちに変更する。加害者たちは、揃って、過去の行為を、詳しく、誇らしげに説明する。ジョシュア・オッペンハイマーは、その行為をカメラに収めたいと提案する。加害者たちは、どのように殺人を遂行したかを、カメラの前で再現し、実際に撮影を開始する。

やがて、加害者たちは、自らの過去を再現するうちに、過去の事実と向き合うこととなる。つまり、加害者たちは、再現映像として、演技(アクト)し、撮影するうちに、かつて犯した事実(アクト)を再確認することになる。


1949年、インドネシアはオランダから独立する。初代の大統領スカルノは、ナショナリズム、宗教、共産主義をスローガンにした「ナサコム」を掲げるが、1965年9月30日、大統領の側近の一部がクーデターを起こす。クーデターは未遂に終わるが、スカルノは失脚、スハルトが権力を握り、共産党は壊滅する。スハルトの後、ハビビ、ワヒド、メガワティ、ユドヨノが政権を握るが、共産党はいまなお、非合法である。

大量の殺人は、アメリカ嫌いのスカルノから、西側の支援するスハルト時代に変わった直後の出来事である。共産主義者を、正義の名のもとに、いちばん虐殺し続けているのはアメリカなのだが、そのアメリカに追随を続ける日本では、ほとんど、まともな報道がなかったのも頷ける。

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