今週末見るべき映画「her/世界でひとつの彼女」

2014年 6月 27日 08:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

円周率を気が遠くなるほどの桁まで、大容量のコンピューターが計算する。将棋やチェスの達人を、コンピューターが負かす。人工知能とやらを積載したコンピューターが、いろいろと推測し、考える。大変な時代になったと思う。コンピューター関係には疎いので、その詳細は知らないが、機械の進歩はすごいことのようだ。

今年のアカデミー賞の作品賞にノミネートされた9本の映画で、見ていなかった最後の映画が、「her/世界でひとつの彼女」(アスミック・エース配給)で、このほどの公開となった。


監督・脚本はスパイク・ジョーンズ。妻と離婚調停中の男セオドアが、サマンサと名乗る人工知能のAI型OSを知り、声だけのサマンサに恋をするといった、一見、ラブ・ストーリーである。が、しかし、単なるラブ・ストーリーではない。監督デビューにして、傑作「マルコヴィッチの穴」を撮ったスパイク・ジョーンズである。なんと、俳優ジョン・マルコヴィッチの脳内に侵入、15分だけ、マルコヴィッチその人になれるという奇想天外さ。脚本のチャーリー・カウフマンとコンビでの「アダプテーション」では、原作を映画化する状況そのものを映画にしてしまう虚実皮膜を、一気に見せてくれた。また、スパイク・ジョーンズは、チャーリー・カウフマン監督の気宇壮大なドラマ「脳内ニューヨーク」(イズムでも紹介)のプロデューサーでもある。


そのようなスパイク・ジョーンズの撮った映画は、単なるラブ・ストーリーであるわけがない。ロマンチックであるわけがない。愛についての直球の映画であるわけがない。本作は、痛烈な文明批評であり、近未来への高らかな警鐘であり、コンピューター社会に潜むおぞましさを暗喩する、背筋が凍るほどのホラーである。

Related article

  • 今週末見るべき映画 「グランド・マスター」
    今週末見るべき映画 「グランド・マスター」
  • 今週末見るべき映画「ジゴロ・イン・ニューヨーク」
    今週末見るべき映画「ジゴロ・イン・ニューヨーク」
  • 今週末見るべき映画「マダム・イン・ニューヨーク」
    今週末見るべき映画「マダム・イン・ニューヨーク」
  • 今週末見るべき映画「草原の実験」
    今週末見るべき映画「草原の実験」
  • 今週末見るべき映画「裁かれるは善人のみ」
    今週末見るべき映画「裁かれるは善人のみ」
  • 今週末見るべき映画「ナイトクローラー」
    今週末見るべき映画「ナイトクローラー」

Prev & Next

Ranking

  • 1
    ワンランク上のご褒美トリップ in マンダリン オリエンタル マカオ
  • 2
    今週末見るべき映画「夏をゆく人々」
  • 3
    今週末見るべき映画「ラサへの歩き方 祈りの2400km」
  • 4
    ハッリ・コスキネンインタビュー、iittala「アートワークスシリーズ」
  • 5
    映画『トロン』のように光り輝くヘルメット
  • 6
    紙にまつわるプロダクトと活版印刷、パピエ・ラボ
  • 7
    まるで水から切り取られたかのような時計、吉岡徳仁デザイン
  • 8
    今週末見るべき映画「セントアンナの奇跡」
  • 9
    本醸造のごとき味わいがある「トッド スナイダー」
  • 10
    大黒屋(栃木・板室温泉)/日本を巡る、アートな旅(5)

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加