今週末見るべき映画「ジゴロ・イン・ニューヨーク」

2014年 7月 10日 08:00 Category : Art

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ジョン・タトゥーロが好きである。コーエン兄弟が監督した「バートン・フィンク」以来のごひいきの俳優さん。「バートン・フィンク」は、ジョン・グッドマンの怪演もあって、ハリウッド映画製作の脚本段階の状況を、徹底的にからかった傑作であった。以後、スパイク・リー作品や、ロバート・レッドフォード監督の「クイズ・ショウ」、コーエン兄弟監督の「ミラーズ・クロッシング」、「ビッグ・リボウスキ」、「オー・ブラザー」など、一癖も二癖もある役どころを達者にこなす。「トランスフォーマー」の三部作でも、ひときわ個性を発揮した。また、「天井桟敷のみだらな人々」など、自身が監督した映画もいくつか。

そのジョン・タトゥーロの新作が「ジゴロ・イン・ニューヨーク」(ギャガ配給)だ。ここでは、脚本を書き、監督し、主演する。共演はウディ・アレン、ヴァネッサ・バラディ、シャロン・ストーン。ジゴロ、ありていに言えば女たらし、男娼である。ジョン・タトゥーロがジゴロに扮し、客を世話するポン引き役をウディ・アレンが演じる。顧客役にシャロン・ストーン。ヴァネッサ・バラディは、戒律厳しいユダヤ教ラビの未亡人という設定。恋がご法度のジゴロと、敬虔なユダヤ教信者の未亡人が、互いに惹かれあう。さあ、どんな展開か、これは、見ない訳にはいかない。


ジゴロとポン引きの話である。好みのテーマではないが人類史上、最古の職業をめぐっての話である。そこは達者な俳優たち、ほのぼのとした味わいで、見る者を引きつける。あざとくなりかねないプロットを、品よく演出する手腕はなかなか。

相変わらず、ウディ・アレンは、好き勝手なトークを披露。ウディ・アレンの大好きな野球からのネタで、大リーグのレッドソックスにいた頃のケビン・ユーキリスのバッティングの真似まで披露する大サービスぶり。やや年齢を重ねたものの、シャロン・ストーンの熟女ぶりと、ヴァネッサ・バラディの可憐さは健在。楽しませてくれる。

ヴァネッサ・バラディは、敬虔なユダヤ教信者の役である。ウディ・アレンもまた、ユダヤ教信者役だが、こちらは、かなりいい加減な信者ぶり。ブルックリンにおける、ユダヤ人街の実情は、寡聞にして不明だが、ユダヤ教の知識があればあるほど、人物関係がより深く理解できると思う。もちろん、ジョン・タトゥーロの脚本に、ユダヤ系の血をひくウディ・アレンが、かなり関わったと思われるからこそのドラマ運びである。

ジョン・タトゥーロの趣味か、音楽アドバイザーのクリス・ロバートソンの選曲か分からないが、使われている音楽の趣味がいい。モダンジャズが基調となり、バラード演奏に定評あるシカゴ派の創始者、ジーン・アモンズのテナーサックスで、「カナダの夕陽」、「マイ・ロマンス」が流れる。他に、チュニジア生まれの女性シンガー、ムバルカ・ベン・タレブの「ルナ・ロッサ」、メキシコの名曲「キエン・セラ」の英語バージョン「スウェイ」をディーン・マーチンが唄い、美貌の女性歌手、ダリダが「ル・トレント」(急流)を唄う。

展開の歯切れ良さ、巧みな人物描写、ラストのほろ苦さなど、ジョン・タトゥーロ演出の、今後が楽しみである。

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