今週末見るべき映画「エスケイプ・フロム・トゥモロー」

2014年 7月 18日 08:00 Category : Art

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ディズニーランド。辛い現実を忘れ、ひとときの夢に遊ぶ。楽しむのは、子どもだけではない。ディズニーランドは東京にもあって、今年が30周年らしい。何度か出かけたことがあり、それはそれは、楽しい遊園地だ。10数年前には、アメリカのアナハイムにあるディズニーランドまで行ったことがある。朝早くから一日、たっぷり楽しんだ。

映画「エスケイプ・フロム・トゥモロー」(ピクチャーズデプト配給)の舞台は、この夢の国、アメリカにあるディズニーの遊園地。ごくふつうの勤め人のジムが、妻と子ども二人で夢の国にやってくる。遊園地に隣接するホテルでの朝、ジムは解雇通知を受ける。なにかと口うるさい妻に、なかなか言うことを聞かない息子と娘だが、ジムは、休暇の最後の一日、精一杯、家族と楽しもうと出かけていく。ところが、この夢の国で、ジムは、性的欲望の伴った、幻覚とも妄想ともつかない「悪夢」を見る。可愛いキャラクターや息子の目は真っ黒、アトラクションで見るものは片っ端から、奇怪な様相になる。同時に、ジムは、園内で見かけたフランスの若い娘ふたりに、ストーカーまがいの行為に出る。そして、訳の分からない女性からの誘惑などなど、まるで、ジムをあざ笑うかのような出来事が次々と起こる。やがて、ジムの身の上に、とんでもないことがふりかかる。


たぐいまれなサスペンスである。ジムの身の上に、どのようなことが起こるのか。また、ジムは、どのような妄想に取り付かれ、幻覚を見るのか。しかも、性的な欲求も絡んでいる。モノクロ映像が、このサスペンスドラマを盛り上げる。スリリングで、よく練られた脚本であり、演出である。監督はランディ・ムーアで、これが長編映画のデビューとなる。長編処女作とは信じられないくらいの手だれの演出、見る者を引き込んでいく。

舞台は、大人も子どもも楽しめる、現実から逃避した夢の国の遊園地。そこで、中年男の妄想が膨らみ、幻覚が現れる。夢と現実の境目が、あいまいになっていく。しかも、衝撃的な、ラストシーンが用意されている。


夢の国は、ほんとうは存在しないだろう。あるのは、ディズニーという会社や、ディズニーを取り巻く資本家たちのお金への夢だろう。日本の東京ディズニーランドとて、状況は同じである。日本での展開は、ディズニー・グループの直営ではなく、ライセンス契約だ。本国へのライセンス料は、半端な額ではないと思うし、日本法人のオリエンタルランド本体でも、かなりの利潤をあげているようである。悪い噂も聞かない。材料を偽ったレストラン報道でも、阪急などはマスコミのやり玉にあがったが、オリエンタルランドでの材料偽称は、小さく新聞に載った程度である。オリエンタルランドのアトラクションのスポンサーは、日本を代表する大企業ばかりである。いまの新聞や雑誌、テレビといったメディアは、企業の広告で成り立っている以上、オリエンタルランドの醜聞を、数多く報道しないのも頷ける。

現実からの逃避は、現実が辛ければ辛いほど、逃避の甘美さは増すのかもしれない。お金への夢の実現はともかく、ディズニーランドでのひとときの夢は叶うかもしれない。ジムの見た悪夢でさえ、ここでは叶ってしまうのだから。


映画は、カリフォルニア州アナハイムにあるディズニーランドと、フロリダにあるディズニー・ワールド・リゾートで、さもホームビデオでも撮るかのように、ディズニー側に無断で撮影した。ディズニー本社からのクレームは、いまのところ(2014年7月現在)、ないという。ディズニーの法務関係者が、アメリカで公開される時に、試写で見て、黙って握手をして、立ち去ったという。映画の出来が良すぎたのか、大人の対応だろうか。それとも、映画一本で、200億円を超す興行収入を日本であげた映画会社を傘下に持つ、大会社だからだろうか。ともあれ、いろんな意味で話題作、一見の価値ありと思う。

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