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今週末見るべき映画「2つ目の窓」

2014年 7月 25日 08:00 Category : Art

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今年の第67回カンヌ国際映画祭のコンペティション作品として、河瀬直美監督の「2つ目の窓」(アスミック・エース配給)が上映された。賞は逃したが、好評だったと聞いている。

舞台は奄美大島。河瀬直美監督のルーツだそうだ。1997年のカンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受けた「萌の朱雀」や、2007年のカンヌ国際映画祭でグランプリ(審査員特別大賞)を受けた「殯の森」(イズムでも紹介)などとともに、河瀬直美監督は、人の生死に纏わる一貫したテーマで、映画を撮り続けている。

静謐のうちに、「命とは何か、死とは何か」と問いかける。人と人が抱き合い、寄り添う。男女の性愛というより、人間と人間である。まだ高校生の若い二人が寄り添う。命と命が繋がり、輪廻転生が続く。十全に幸福であるとは言えない状況がある。島の人たちは、厳しい自然と共生し、海の彼方にあるユートピア、ネリヤカナヤを信じている。自然の災害もあるけれど、自然からの豊穣さを分かち合っている。そこに、「近代」が忍び寄ってくる。劇中、パワーショベルが、木々を噛みくわえ、なぎ倒す。パワーショベルの先端は、映画のCGで出てくる、機械でできたモンスターのような風貌に見える。ユートピアを信じていても、人は逝く。時間は流れていく。そして、「近代」に自然が破壊されようとしてもなお、人の営みは続いている。


冒頭、羊の血が流れる。旧約聖書の「出エジプト記」の12章は「主の過越」である。「その血を取って、子羊を食べる家の入り口の二本の柱と鴨居に塗る。…あなたたちのいる家に塗った血は、あなたたちのしるしとなる。血を見たならば、わたしはあなたたちを過ぎ越す」。キリストが自らの血で、人間の罪の犠牲となる、ずっと以前のことである。

映画の登場人物たちは、海辺に立ち、いつも空を見上げる。森や林には緑が溢れている。劇中、奄美の島唄「いきゅんにゃかな」が唄われる。「やっぱり逝ってしまうのね? 遠い島にそうやってもう、逝かなきゃ。千年万年、長生きしたいです。もちろんそうしたいのですよ」と。自然を破壊しようとする「文明」に対して、人間がいくら祈りを捧げても、自然はもはや、耳を貸さないかのようである。

2年前、河瀬直美監督は、最愛の養母を亡くす。そして、ディレクターズ・ノートに記す。「養母が逝ってしまっても、また太陽は昇り、月は満ちてゆくのだ。その偉大さ。わたしはその自然の偉大さをこの作品で最大限に描きたいと思う」。

映画は、声高に叫ばない。海、森、樹木たちの雄大な自然が、微妙な陰りを持って映し取られる。大きなドラマではない。深い情感の籠もった表現に終始する。人は叫ばない。多くの感慨を込めて、空を見上げ、海を見つめる。

吉永淳と村上虹郎という、若い俳優が主演している。演出には、厳しさが伴ったものと思われる。いずれも大人への入り口にさしかかったデリケートな年齢である。母親を汚れた存在と感じる若者の純一さを、村上虹郎が好演する。気丈夫で凜とした少女を、吉永淳が力演する。サポートするのは、渡辺真起子、松田美由紀、杉本哲太、村上淳、常田富士男など、芸達者が揃う。


ちなみに、今年の第67回カンヌ国際映画祭のコンペティション作品は18本であった。どれも、見てみたい優れた映画ばかりである。「2つ目の窓」は、賞こそ逃したものの、カンヌのコンペティション作品に選ばれただけでも快挙だろう。お金目当ての匂いが漂い、評判の小説やコミック、テレビドラマを原作とする貧困な企画が多い日本映画界に投げかけた、貴重な一石である。フランス、スペインからの出資を得ての製作だが、オリジナル脚本で、これだけの映画製作ができることを、河瀬直美が証明したと思う。

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