今週末見るべき映画「ニンフォマニアック Vol.1、 Vol.2」

2014年 10月 10日 08:00 Category : Art

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つねに挑発的、挑戦的な作風の映画作家は多い。デンマークのラース・フォン・トリアー監督もそのひとりだろう。人間のこころのうちを、抉るように見せてくれた「ドッグヴィル」や「マンダレイ」が好きな映画だが、その後、「アンチクライスト」、「メランコリア」を撮る。ラース・フォン・トリアーの映画は、常に、人間の暴力や性的な欲望など、人間の本性が見え隠れする。

新作の「ニンフォマニアック」(ブロードメディア・スタジオ配給)もまた、性を通して人間の内奥に迫る。本作は、Vol.1とVol.2の2部に分かれ、公開はVol.1が10月11日(土)、Vol.2が11月1日(土)になる。試写ではいちどに、続けて見たが、それぞれが独立した映画として見ても、いっこうに構わない。Vol.1もVol.2も、ちゃんと見せ場がたっぷり。プロローグとエピローグをはさんで、全部で8つの章からなる。Vol.1では、プロローグと5つの章を、Vol.2では、3つの章とエピローグを見せる。


タイトル通りの「色情狂」を、ごひいきの女優、シャルロット・ゲンズブールが演じる。性をめぐる映画は、数多いが、これほど余裕たっぷりに、女性の性を描いた映画は珍しい。もちろん、リアルな性描写が多いが、いわゆる猥褻(わいせつ)な感じはまったくと言っていいほど、ない。つまり、見ていても、性的興奮を覚えない。シャルロット・ゲンズブール演じる中年の女性ジョーは、問わず語りに、幼い頃からの自らの性の遍歴を、ステラン・スカルスガルド演じる初老の男性セリグマンに語り始める。15歳の処女喪失から、性の依存症とも言える数々の遍歴を。

結構は、いろんなパターンの映画である。性のめざめから処女喪失の青春ドラマであり、ロマンス、コメディ、ファンタジーと、さまざまな手口で、8つの章を繋いでいく。ジョーの語る性遍歴に、セリグマンが該博な知識で応じる。笑えるシーンも多い。「釣魚大全」から引用されるセリフは、釣りの本質が、異性を手中にする喩えとなる。

そのほか、哲学、宗教、政治、数学、音楽、心理学などに関するセリグマンの知識が披露される。フィボナッチ数列は、1、1、2、3、5、8、13、21、34…と続く。ジョーが処女を喪失した折り、前から3回、後ろから5回、挿入される。映画を構成する章もまた、この5と3の数字である。フィボナッチ数列と関連するバッハの対比法、東方教会と西方教会、エドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の惨劇」、ノアの子孫の話などなど、セリグマンは、多くの引用で、ジョーの話に聞き入る。もう、セリグマンの博識に感心したり、ニヤリとしたり、だ。

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