今週末見るべき映画「誰よりも狙われた男」

2014年 10月 16日 08:00 Category : Art

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脇役のころから、主役を喰うほどの演技を示していたのがフィリップ・シーモア・ホフマンである。この2月、薬の過剰摂取と思われる、不慮の死。まだ40代なかば、若いのに惜しい。いくつかの脇役を経て、いつの間にか、主役に躍り出ていた。「カポーティ」、「脳内ニューヨーク」でも熱演だったが、前作の「ザ・マスター」(イズムでも紹介)では、静かな立ち居振る舞いながら、内に秘めた狂気を漂わせ、カリスマ性たっぷりの新興教団のボスを力演した。このフィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演映画「誰よりも狙われた男」(プレシディオ配給)は、スパイ小説の大御所、ジョン・ル・カレの同名の原作(早川書房・加賀山卓朗訳)を、たくみにダイジェストする。


フィリップ・シーモア・ホフマンが扮するのは、ドイツの連邦憲法擁護庁に属する情報局の外資買収課のギュンター・バッハマンである。いってみれば、スパイだが、バッハマンは学歴がないにも拘わらず、ワルシャワ、アデン、ベイルート、バグダッドなどで、秘密活動要員としての輝かしい経歴を持つ。ベイルートでの活動中、CIAの裏切りで、いまは左遷された形で、ハンブルグでのテロリスト対策チームの責任者になっている。

原作でのバッハマンは、「四十代なかばに差しかかって相変わらずむさ苦しく、いつ吠えるかわからない雑種犬で、両肩はがっしりしている。上着の襟にはしょっちゅう灰が落ちていて、長年の同僚にして助手の女傑、エアナ・フライが手で払ってやる。バッハマンは意気旺盛でカリスマ的、人をぐいぐい引っ張っていくワーカホリックだが、笑顔はすばらしかった」と描かれる。このイメージだけで、フィリップ・シーモア・ホフマンがまさに適役ということが分かる。東西冷戦以後、スリリングなスパイ合戦は消滅したかも知れないが、ジョン・ル・カレの創作意欲は衰えない。組織に翻弄されるスパイたちの宿命を通して、より、人間の内面描写に磨きがかかっていると思う。

ロシアからハンブルグに密入国した若者イッサを、バッハマンたちは注目する。イッサは、イスラムの過激派のひとりで、国際指名手配を受けている。このイッサを支援するのが人権擁護派の女性弁護士アナベルだ。イッサの情報から、ある人物の秘密口座を抱える銀行家のトミー・ブルーに行き着く。バッハマンの上司たちは、イッサを拘束しようとするが、バッハマンは、イッサを泳がせ、さらに裏にある真実を探ろうとする。そこに、アメリカのCIAが介入してくる。

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