Interview:非凡なる若き建築家・佐野文彦氏が語る「文化のアップデート」

2014年 10月 29日 08:00 Category : Art

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建築のみならずアートやプロダクトデザインなど、国内外のさまざまなフィールドでめきめきと頭角を表している建築家・佐野文彦氏。彼の手が生み出す作品は、朝日の差し込む窓を開けたとたん、部屋に入り込んでくる澄み切った空気のように清らかな驚きと感動を与えてくれる。

「デザインしかしないとか、建築しかしないとか、アートしかやらないとかそういうわけでもないし、領域が決まっていないというか、いろんな形があるので、新しい領域みたいなことができたら理想的」と語る佐野氏は、今年のELLE DECOR Japanの「ヤング ジャパニーズ デザイン タレント賞」を受賞したばかり。数寄屋大工という異例の経歴、美術家としての顔を併せ持つ新進気鋭の俊才・佐野文彦氏のインタビューをお届けする。


#01. 素材の個性を惹き出す。それが何より僕が大切にしていること

―元々、数寄屋大工をなさっていたそうですね。

はい、京都の中村外二工務店に弟子入りして、5年半ほど勤めました。文化財、迎賓館、茶室、料亭、旅館…さまざまな現場で経験を積ませてもらいました。社寺とは違って、数寄屋はいろんな材料を使う建築です。竹や皮付き丸太、あるいは檜、杉、松、栗などの素材を組み合わせて作っていきますが、それぞれに独自の個性があります。例えば、一つひとつの木目の見せ方、手触り、足触り、香り。どうすれば個々の素材を生かせるか、ということを多く学びましたね。以来、価格の高い安いにかかわらず、素材の個性を惹き出すことを大切にしています。

修行中は、親方の家の向かいで10人暮らしの寮生活でした。弟子になって3年目を迎えた頃、ふと思ったんです。大工の仕事を通じて、“この建物の製作に関わりました”ということはいえるけど、僕ひとりが作ったわけではないし、デザインしたわけでもない。だったら、未熟ながらでも、自分の作品を作っていく必要があるなと。仕事の現場で学んでいること、どちらかというと“練習”に近い状態になっていることを“力試し”できる場で、自分なりに作り始めました。例えば、友人の家を直したりとか。予算も限られていましたし、原価だけいただくことがほとんどでしたが、夜中にコソコソッと活動して、オーセンティックなことをやっていましたね。

―それは、行く先、建築家になることを踏まえた上でのことでしたか?

そうですね。職人の世界って、実家が工務店や設計事務所で、後を継ぐことを前提に弟子入りしている人が多いのですが、僕には「建築家になりたい」という目標がありました。そもそも、建築をやりたいと思ったのは二十歳くらいの時で、ふつうの人よりもかなり遅かったんです。もし、来年のことだけ考えるなら、建築家を目指す多くの人たちのように、大学や専門学校に入ったかもしれません。例えば、建築で有名な大学を卒業する。その後は、先達の建築家の事務所で働いて、独立する。このルートを辿る人がどれだけいるのかといえば、おそらくものすごい数じゃないかと。加えて、誰かの後ろを追いかける形になりますし、だったら、今、自分のいる場所でしか見れないもの、学べないこと、経験できないことを存分に吸収して、最終的にはその人たちと同じ土俵で勝負できたらいいなと考えたんです。無意識でしたが40歳になるまでにどうなっていたいか、そのためにどうするか、と思ってあれこれ考えていましたね。

―工務店を辞めたあとは、すぐに独立されたのですか?

デザインと施工を兼ねて請け負うような小さい仕事をいくつか経験した後、海外に行ったことなかったので、2 か月ほどヨーロッパへ旅に出ました。遺跡から現代建築、デザイン、アート、文化、自然などたくさんのものを見ました。その後、東京の設計事務所で2年ほど働いたのち、『studio PHENOMENON』を設立しました。フリーになるまでは、漠然とした“建築家像”みたいなものがありましたが、独立したら、「あれがやりたい、こういうことがしてみたい」という大きな夢みたいなものは気づけばなくなりましたね。「将来、美術館の設計に携わりたい」と思うなら、美術館を手掛けているような設計事務所で働けば、可能性は大いにあるでしょう。でも、当時の僕のように無名でフリーだと、「美術館の仕事がやりたい」といったって、ないんですよ。当たり前のことかもしれないけれど、あるものしかないんだよねと思って。目の前にあるものに全力でぶつかって、自分が今やれる最大限の結果をどうやって出すかだけを考えていたら、美術館を建てたい、みたいな根拠のない理想はなくなっていました。

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