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今週末見るべき映画「6才のボクが、大人になるまで。」

2014年 11月 13日 08:00 Category : Art

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映画というのは、現実の時間から、撮影された時間を切り取り、加工、編集するメディアでもある。時間の表現は自由自在、登場人物は、時代によって、複数の俳優が演じることが可能である。つまり、時間そのものは、いかようにも加工、編集できる。ここに、ある家族の12年間を、12年にわたって撮影した映画がある。主役の4人を同一人物が演じる。もちろん、加工、編集はされているが、ほぼ、映画製作の時間と、映画で経過する時間が同じなのである。まさに希有な映画。

「6才のボクが、大人になるまで。」(東宝東和配給)は、映画製作の期間が12年に及ぶ。アメリカの、どこにでもあるような現実を、ホームドラマ仕立てで、同じ俳優たちが、12年間、同じ役を演じる。だから、6歳の少年メイソンは18歳になり、実の父のメイソン・シニアもまた12歳、年をとる。このような映画製作の方法は、かつて、ありえなかったと思う。完成までに12年を要するような映画の製作を引き受けるプロデューサーが、まず、いない。実現させた監督は、リチャード・リンクレイター。「恋人たちの距離(ディスタンス)」、「ビフォア・サンセット」、「ビフォア・ミッドナイト」(イズムにて紹介)の「三部作」を完成させた監督である。まさに監督の執念、力技で、なるほどなぁ、映画製作にはこのようなアイデアもあるのか、と思う。


映画は、ごくふつうのホームドラマ。登場人物たちにとっては大きな出来事でも、激動というほどの大きな事件は起こらない。毎年毎年、人は年齢を重ね、その都度の家族の事情が、さりげなく描かれるだけである。1年経ち、数年経ち、子供も大人もそれぞれが、成長し、変化を重ねていく。日々の暮らし、出来事が、淡々と綴られていく。見ているうちに、ふと、自分が6歳から18歳までのいろんな出来事が、ぼんやりながら、脳裏をよぎる。

メイソンの、幼児から少年、青年へと成長していく過程を眺めるのは、実に微笑ましい。ところが、メイソンが思春期の15歳頃から、少しずつだが、見る側の心が騒ぎ、震えていく。単なる日常の積み重ねが、突然、大きな意味を持ってくるようになる。観客は、ほぼ大人になりかかるメイソンを、幼児だった12年前から知っている。なぜ、急に「感動」を覚えるのだろうか。それは、メイソンへの感情移入が、徐々に完成に近づくからだと思われる。

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