Interview:建築家・板坂諭|鮮やかな感性から生み出されるデザイン

2014年 11月 6日 10:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

建築家でありながら、ユニークなプロダクトのデザインで世界的に注目される板坂諭氏。建築とデザイン、アートの分野を自由に横断する板坂氏の取り組みは、環境問題や社会問題など、現代性を反映させながら軽やかなかたちを生み出し続けている。デザインで盛り上がるこの秋の東京でも「Any Tokyo」や、恵比寿にあるデザインギャラリーSOMEWHEREでのエキシビション「Poetry of lighting」に参加し注目作を発表するなど、その活動を目にする機会も多くなってきた。そのものづくりの思考の背景について話をうかがった。

「Any Tokyo」で発表された「BalloonChair」

-建築とともに独創的なプロダクトで注目を集める板坂さんですが、建築とプロダクトデザインのどちらに主軸を置かれているのでしょうか。

私の仕事としましては建築の設計を主軸に置きながら、プロダクトデザインのお仕事をさせていただいているというスタンスです。大学卒業後に入所した住宅系の設計事務所の勤務を経て、現在も住宅などの設計の仕事をしています。最近ではプロダクトのデザインをさせていただく機会も多く、そちらの仕事をメディアに取り上げていただくことが多いものですから、それに比例してプロダクトの仕事の比率も多くなっているというのが現状です。

-建築の設計とプロダクトのデザイン、板坂さんのなかではどのような違いがあるのでしょうか。

日本では住宅の平均寿命は27年などといわれていますが、きちんとつくれば100年でも200年でももつのが建築です。建築の設計においては、その時代の感覚にあわせてつくるというよりは、奇をてらわずにひたすら堅実につくるべきであるというのが、ぼくのスタンスです。また、ひとつずつ丁寧に向き合うことには変わりはないのですが、建築には法規やクライアントのオーダーなど、さまざま制約がつきものであることは事実としてあります。

長年建築の設計をしていますと、時代を敏感に反映させた、感覚的でより自由な視点でものを考えてみたいという思いもおこってきますが建築でそれを前面に出してしまうのには抵抗があります。

プロダクトのデザインをするようになったのは、建築の仕事に付随する家具などのデザインの依頼をいただいたのがきっかけです。それを積み重ねていった結果が、現在みなさんにみていただいているようなプロダクトに繋がっています。

そうするうちにあくまで生真面目に建築に向き合いながらも、プロダクトのほうでは構造、デザイン、価格の面でももっと挑戦してもいいのではないかと思うようになりました。私のなかでは、堅実な仕事である建築と、インパクトのあるものをデザインするプロダクトとのあいだには、明確な線を引きながらやっているつもりです。

-それが板坂さんのプロダクトラインである「h220430」名義での活動になっているわけですね。

そうです。今年出版させていただいた「h220430」の本では、あえてぼくの名前を小さく表示させているのですが、「h220430」ではあえてぼくの名前を表に出しすぎないように活動しています。その理由は、先ほどもお話したように、ぼくの中では建築とプロダクトはまったく違う頭でやっているという思いがあるからです。今後プロダクトの仕事を見ていただいた方から、こちらの考えで建築つくってくださいとお願いされることもないともいえません。それはぼくの建築の考え方とは反するものですから、そういうことがないように名義を分けているんです。

最近では、ありがたいことに「h220430」での仕事を知っていただく機会が多くなり、「h220430」のホームページを経由して海外のお客様からプロダクトデザインのご依頼をいただく機会が多くなりました。

-さきほど現代建築の寿命というお話がありましたが、長い時間を視野に入れながら建築の仕事をされつつ、現代性に特化したプロダクトのデザインをされるという、板坂さんの中にある二面性が興味深いですね。建築のような大きなものを作っていると、逆に自分一人の世界で完結するものをつくりたくなると聞いたことがあるのですが、板坂さんはいかがですか?

統計的には分かりませんが、インテリアデザインでもプロダクトデザインでも、現在活躍されている方のなかには建築を学んだことがある方も多いのではないでしょうか。それは建築畑の人には、何でも器用にこなす必要があり、ものごとをバランスよくみる感覚を鍛えられている人が多いからだと思います。

ぼく自身は昔からものを考えたりつくったりすることが好きでしたので、建築をやっているときにもさまざまなアイデアが浮かんできて、それを実際にかたちにしたいけどできないというフラストレーションはつねに持っていました。それを解消するために「h220430」で建築よりもフットワーク軽くつくることのできるプロダクトに取り組んでいるという側面もあります。

ぼくの場合は特殊だと思うのですが、プロダクトであっても最初からクライアントありきではなく、このようなものが今の世の中にあったらいいなという想いを形にして発表してきました。そのように個人的な想いを率直に提案できたことが、逆にみなさんに印象深く思っていただけるものをつくれている理由かなと思います。

Related article

  • ディーター・ラムス インタビュー、機能主義デザイン再考
    ディーター・ラムス インタビュー、機能主義デザイン再考
  • 新しいステンレスのスタイルを提案する「SUS」
    新しいステンレスのスタイルを提案する「SUS」
  • 深澤直人&皆川明インタビュー 「ふしとカケラ MARUNI COLLECTION HIROSHIMA with minä perhonen」
    深澤直人&皆川明インタビュー 「ふしとカケラ MARUNI COLLECTION HIROSHIMA with minä perhonen」
  • 今週末見るべき映画「FUCK」
    今週末見るべき映画「FUCK」
  • スタルク健在、ドイツで新作バスルーム製品を発表
    スタルク健在、ドイツで新作バスルーム製品を発表
  • モレスキンノートブックの世界巡回展「Detour」
    モレスキンノートブックの世界巡回展「Detour」

Prev & Next

Ranking

  • 1
    【レポート】第三回ヘンタイ美術館、「理想と現実、どちらがヘンタイか」
  • 2
    グリーン ポルシェ!  パナメーラS e-ハイブリッド
  • 3
    車と人のいい関係。ボルボ V40、デザイナーが語る北欧主義
  • 4
    インタビュー:マリオ・ベリーニ、名作誕生を語る
  • 5
    谷尻誠インタビュー:都心の広場に巨大なジャングルジムが出現
  • 6
    ムービー:軽井沢千住博美術館、西沢立衛設計
  • 7
    iPad、販売台数200万台を突破
  • 8
    レイバンの名作が、ミッドセンチュリー色にパワーアップ
  • 9
    アルフレッド ダンヒル 銀座本店がオープン
  • 10
    アルファ ロメオ 8C コンペティツィオーネが日本国内に

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加