今週末見るべき映画「白夜のタンゴ」

2014年 11月 21日 08:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

SPレコードに針が乗る。アルゼンチン・タンゴの名曲「ラ・クンパルシータ」だ。タンゴは、もともと、アルゼンチンのブエノスアイレスが発祥の地と聞いている。ところが、世界的に有名なフィンランドの映画監督アキ・カウリスマキが異説を唱える。タンゴはもともと、フィンランドの音楽で、1840年代に船乗りたちがウルグァイ、アルゼンチンに伝えたものだ、と。

かつて、「マッチ工場の少女」という映画で、フィンランド・タンゴの大歌手レイヨ・タイパレの「サトゥマー」(おとぎ話)を挿入し、近作の「ル・アーヴルの靴みがき」(イズムでも紹介)では、アルゼンチン・タンゴの大歌手、カルロス・ガルデルの「クエスタ・アバホ」(下り坂)を取り入れたカウリスマキである。その発言は、妙に説得力がある。

これを伝え聞いたブエノスアイレスのバンドネオン奏者、ギター奏者、歌手の3人の男が、カウリスマキの説を確かめるためにフィンランドを旅する。いずれも、タンゴはアルゼンチンのものと信じてやまない連中である。


ドイツ、アルゼンチン、フィンランド合作の映画「白夜のタンゴ」(トレノバ配給)は、この3人組のフィンランドへの旅を描いた、ドキュメンタリーと劇映画が合体したような音楽映画だ。タンゴ、ことにアルゼンチン・タンゴのお好きな向きには、放っておけない映画だろう。

何度か、アルゼンチン・タンゴの出てくる映画をレビューするたびに書いているが、とにかく、アルゼンチン・タンゴが好きである。家にいる日は、アルゼンチン・タンゴを聴かない日はない。アニバル・トロイロ。オスヴァルド・プグリエーセ。カルロス・ディ・サルリ…。歌もいいなあ、ほとんど、カルロス・ガルデルだが。コンフント(小編成)では、五重奏のキンテート・レアル。六重奏ならセステート・タンゴ。もちろん、アストル・ピアソラの初期のモダンさもいい。そんな具合に、まるでとりとめのない聴きようである。

さて、本作。映画の設定自体が、タンゴ好きには堪らない。ヤン・シベリウスを生んだ国である。豊穣な音楽があるはずである。タンゴは、1880年頃、ブエノスアイレスの港町、ラ・ボカ界隈で誕生、船乗りやヤクザ、娼婦たちが育んだ場末の音楽のはずである。カウリスマキの説を信じるなら、ひょっとして、フィンランドにも、似たような音楽が、アルゼンチンよりも先に出来あがっていたのかも知れない。

Related article

  • 今週末見るべき映画「イーダ」
    今週末見るべき映画「イーダ」
  • 未だかつてないピクセル絵本「点 ten_do_ten」
    未だかつてないピクセル絵本「点 ten_do_ten」
  • 森美術館、2011年の企画展は?
    森美術館、2011年の企画展は?
  • 混沌という状況の中から生まれてくるアート 「大竹伸朗展 ニューニュー」
    混沌という状況の中から生まれてくるアート 「大竹伸朗展 ニューニュー」
  • インタビュー:アジア初の個展、フリードリッヒ・クナス
    インタビュー:アジア初の個展、フリードリッヒ・クナス
  • タナカカツキによる、前人未踏のブルーレイ映像
    タナカカツキによる、前人未踏のブルーレイ映像

Prev & Next

Ranking

  • 1
    グラフィックデザイナーによる本のデザインを展示
  • 2
    ミ・チョリパン(代々木上原)/TOKYO、厳選サンドイッチ(4)
  • 3
    ボッテガ・ヴェネタ、2010春夏広告キャンペーン
  • 4
    Patisserie Etienne(パティスリー・エチエンヌ)/女をあげる、sweetなスイーツ(5)
  • 5
    世界最高のアートフェア「Art Basel」をプレビュー
  • 6
    今週末見るべき映画「ティエリー・トグルドーの憂鬱」
  • 7
    サンドイッチリー シャポードパイユ(中目黒)/TOKYO、厳選サンドイッチ(2)
  • 8
    今週末見るべき映画「人生は小説よりも奇なり」

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加