磯崎新「12×5=60」展がワタリウム美術館にて開催

2014年 11月 28日 08:30 Category : Art

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自身が美術館に足を運ぶのには、ふたつの理由がある。ひとつはそこで開催されている企画展に興味があるとき、もうひとつは、美術館自体の建築が素晴らしいときだ。ふたつ目の理由で訪れた美術館は、ハラ・ミュージアム・アーク、水戸芸術館、群馬県立近代美術館、豊田市美術館。最後の豊田市美術館は谷口吉生の建築だが、それ以外は磯崎新建築の美術館である。自身にとって、磯崎新氏は“一度は行っておきたい”と思わせる美術館をつくる建築家なのだ。

そんな磯崎新氏が、これまた美術館建築も素晴らしいワタリウム美術館(こちらはマリオ・ボッタ建築)で個展を開催している。タイトルは「12×5=60」。計算は合っているが、そのタイトルから展覧会の中身を推測するのは少々難しい。答えは、本展で展示されている磯崎新氏の作品年表にあるようだ。1955年から2015年の60年にわたる磯崎作品が、作品名や写真とともに年代ごとに記されている。そして、「12×5=60」という数式は展示構成にもリンクしている。

会場でひと際存在感を放っているのが、〈鳥小屋(トリー・ハウス)〉と呼ばれている軽井沢の書斎の実寸模型。この〈鳥小屋〉を中心に、磯崎新氏の思考のネットワークを「12の建築的思考」「12のコラボレーション」「12の栖」「12の旅(東洋篇 オリエント)」「12の旅(西洋篇 オクシデント)」という、5つのテーマで12項目に分類して展示している。

磯崎新 12×5=60 会場風景/〈鳥小屋〉の実寸模型 撮影:岡倉禎志

そもそも本展は、磯崎新氏の「建築外的思考」に焦点をあてたもので、ここで用いられる「建築外的思考」には、ふたつの側面があるという。まず、一般的な建築の外側の領域、つまり美術、音楽、映像、写真をはじめとする現代の文化表象全般における、具体的「建築外」という側面。次に、その文化表象の手法を動員して解体・再編を試みる「アーキテクチャ」を指す、思想的「建築外」という側面だ。

何だか難しい印象がするのは、建築家という職名を逸脱したアーティスト・アーキテクトである磯崎新氏らしいといえば、そうなのかもしれない。ただ、これまでの磯崎新展でとらえきれなかった「建築外的思考」の可視化を試みているのも事実だ。

「建築外的思考」の象徴とも言えるのが、先に述べた〈鳥小屋〉だ。わずか四畳半ほどの小さな空間は、磯崎新が夏期に東京のアトリエを離れ、建築家という職名から逃れる建築外の仕事場であり、本展では、思想としての「アーキテクチャ」を世界中に発信する文人の「栖(すみか)」と見立てている。また、磯崎新氏は現代の都市生活者を立体格子の鳥籠の住居に閉じこめられた存在であると指摘してきた。こうした固定観念化した人間の住居を解体する意味も込めて、鳥や獣の巣のような「本来性における住居」としての「栖」を提唱したこともあるようだ。

〈鳥小屋〉の実寸模型には、期間中16時~18時の間であれば実際に上ることができるという。書斎の一角に窓があり、そこから見える外の風景も映像で再現されているというから、磯崎新氏の思考に少しだけでも近づけるかもしれない。

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