今週末見るべき映画「ニューヨークの巴里夫(パリジャン)」

2014年 12月 5日 08:00 Category : Art

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かつて「巴里のアメリカ人」という優れたミュージカル映画があったが、「ニューヨークの巴里夫(パリジャン)」(彩プロ配給)は、逆のパターンとなる。「巴里夫」と書いて、パリジャンと読ませる。やや無理な気もするタイトルではある。パリのフランス男が、別れた妻と住むふたりの子どもと過ごしたくて、ニューヨークに出向く。


フランス、ベルギー、アメリカの合作で、監督はフランスのセドリック・クラピッシュ。と言えば、「スパニッシュ・アパートメント」、「ロシアン・ドールズ」を撮っている監督。新作は、いわばこの後日談である。ロマン・デュリス扮するグザヴィエは、「スパニッシュ・アパートメント」では25歳、「ロシアン・ドールズ」では30歳だったが、ニューヨークでは40歳になっている。無軌道な20代の学生時代、やっと作家への道が開けたかのような30歳から、本作では40歳という設定である。

かつてフランソワ・トリュフォー作品で、「大人は判ってくれない」の五部作があったが、本作は、これが三部作のラストである。リチャード・リンクレイター監督は、「ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)」、「ビフォア・サンセット」、「ビフォア・ミッドナイト」(イズムでも紹介)の三部作を撮ったが、本シリーズも、ほぼ同じ結構といえる。

セドリック・クラピッシュ監督の語り口の巧みさ、小粋なタッチは相変わらず。また、うろたえ、あせる人たちに向けるまなざしが、とても暖かくて、いい。そして、いつもながら、年齢に関係なく、人生とはままならないものとのメッセージを、笑いながら受け取ることになる。

グザヴィエは、いきなり妻から離婚を宣言される。まだ幼い子どもふたりを連れて、妻はニューヨークに。子ども可愛さに、グザヴィエもまたニューヨークに向かう。オドレイ・トトゥ扮する、かつての恋人マルティーヌと再会するけれど、グザヴィエは次々とトラブルに見舞われる。男40歳。もうすでに大人である。人間として、少しは成長しているはずである。グザヴィエのみせる異国での思慮分別が、思わぬ笑いと共感を誘い、魅せられる。

もちろん、大上段にふりかぶった大作ではないけれど、深い人間観察と、滋味に溢れた映画である。先行する二作品を見ていない人でも、これ一作だけで、セドリック・クラピッシュ作品のとりこになるはずである。15年を経てのロマン・デュリスとオドレイ・トトゥの主役ふたりが、ますます、いい味を出す。つい最近では、「ムード・インディゴ うたかたの日々」(イズムでも紹介)で共演していることもあってか、息はぴったり。ともに子どもまで持ちながら、互いに求め合う、すてきなシーンが用意されている。


何歳になっても男は変わらない、といってしまえば、身も蓋もないが、変わろうと努力しても、努力が空回りすることが多い。グザヴィエ、40歳。ことごとく、自分でまいた種である。自らと関わりのある、さまざまなトラブルが続く。果たして、グザヴィエはどう決断するのだろうか。

絵はがきのようなニューヨークではないけれど、カラフルなチャイナタウンや、セントラルパーク周辺の静かなニューヨークが、うまく撮られている。パリでなく、ニューヨークでも、フランス人たちは、愛し、愛されたいと願う。あと10年もすれば、グザヴィエやマルティーヌの子どもたちは思春期である。バルセロナで知り合い、ロンドンで恋を知った人たちである。リチャード・リンクレイター作品のイーサン・ホーク、ジュリー・デルピーと同様、さらに10年後のロマン・デュリスとオドレイ・トトゥを見てみたいものだ。

セドリック・クラピッシュ監督は、これで最後と言うが、10年も経てば、何が起きても不思議じゃないとも語っている。蛇足ではない続編を、ぜひ見てみたい。

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