「第15回東京フィルメックス」閉幕、全授賞作品紹介

2014年 12月 10日 08:00 Category : Art

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11月30日、第15回東京フィルメックスが閉幕した。今年もまた、コンペティション作品、特別招待作品に、力作、話題作が多く、中味の濃い映画祭であった。閉幕して数日、心地いい疲れに身を委ねながら、見た作品を反すうしていた。どの作品も、作家の生まれた国、政治、社会、組織、家族に、真摯に向き合い、表現しないでいられないといった切迫した重みがあった。ことに、アジア各地域の新鋭作家たちによるコンペティション9作品は、興行的に成功するかどうかは分からないが、いずれも深く、重いテーマに踏み込んで、作家の切実な想いが伝わってくる作品群であった。

閉幕に先駆け29日には、コンペティション作品9本から選ばれる最優秀作品賞、審査員特別賞の発表、記者会見、授賞式があった。また、観客の投票で与えられる観客賞も発表された。

まず、コンペティション9作品から、学生審査員による学生審査員賞が発表された。イスラエルのアサフ・コルマン監督の「彼女のそばで」だ。受賞理由は「ハンデを抱えた妹と、付きそう姉の距離感、関係性を見事にあぶり出し、姉妹の瞬間瞬間を切り取る作家の誠実な眼差しがふたりに寄り添った」。もちろん、異存はない。

「彼女のそばで」

ついで、観客の投票になる、コンペティション9作品と特別招待作品(クロージング作品の「マップ・トゥ・ザ・スターズ」と、「ONE ON ONE(原題)」を除く)の監督に与えられる観客賞が発表された。発表は、市山尚三プログラム・ディレクター。受賞は特別招待作品で、グルジア、フランス、UK、ドイツ合作になるモフセン・マフマルバフ監督の「プレジデント」。いまなお、母国イランから亡命生活中のマフマルバフ監督が、全編をグルジアで撮影した作品。架空の国の独裁者が、クーデターで失脚、孫息子とふたりで逃避行を続ける。かつての部下たちや一般人に触れる過程で、自らの過去を振り返っていく。

監督のコメントが届く。「人間は殺し合うために生まれてきたのではない、生まれてきたのは、お互い、愛し合うためだと思う。平和を大切にする文化の存在は弱いが、芸術、特に映画は、暴力的な世界に平和を伝える大きなメッセージと思う」。「プレジデント」は、すでに来年の一般公開が決まっている。

「プレジデント」

今回は、コンペティション作品から、スペシャル・メンションが授与される。発表は柳島克己審査員。中国のチャオ・ダーヨン監督の「シャドウデイズ」だ。一人っ子政策にまつわる悲劇を、サスペンス・タッチで描いていく。「映画と社会との緊密な関係を築くことに全力を傾けているのに感銘」との受賞理由。ダーヨン監督は「今後とも撮り続けていく自信が持てた。いい作品を撮ることが人生で求めるもの、目標だ」と語る。

「シャドウデイズ」

同じく、柳島克己審査員から審査員特別賞が発表される。「彼女のそばで」だ。学生審査員賞とのダブル受賞になる。「力強く、感動的。初の監督作品なのに、熟練味ある行き届いた演出力」との評。コルマン監督のコメントを林加奈子ディレクターが代読する。「実体験が基。私たちの夢は映画のための資金を集めること。私たちの社会の政治的問題を扱っていないこの作品が、ここ最近のイスラエル映画のように成功できるのか、とても心配していた。東京フィルメックスに招待されたことがすでに大きな賞で、映画の力の証明だった」。

そして、最優秀作品賞が発表される。私見だが、もし審査員だったら、ヨルダン、U.A.E、カタール、UK合作の「ディーブ」を推しただろう。狡猾なイギリス政府に翻弄されるべドウィン族の悲哀が、ひとりの少年の砂漠行を通して描かれた傑作であった。

発表は、リチャード・ローマンド審査員。フィリピンのフランシス・セイビヤー・パション監督の「クロコダイル」だった。受賞理由は、「誠実な人間性を携えながら、この作品は、スピリチュアルな超越した場所へ私たちを誘い、心暖かい人々の生活に遭遇する。作品の強さは、実直で一貫性を持った監督のスタイルと、キャストの生き生きした表現力にある」。世界に蔓延する暴力に対して、暴力で報復する。そういった風潮に対して、本作のラストシーンでは、ワニに襲われた娘の母親は、重大な決断を下す。力強いメッセージのある傑作である。

「クロコダイル」

パション監督は、東京フィルメックスのタレンツ・トーキョー(当時はネクスト・マスターズ・トーキョー)の第一期生である。喜びもひとしおだろう。「上映されること自体が光栄、まさか最優秀作品賞を取れるとは。賞金は映画に出てきたコミュニティのみなさんのために使いたい」とパション監督。

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