今週末見るべき映画「毛皮のヴィーナス」

2014年 12月 19日 08:00 Category : Art

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ポーランド出身のロマン・ポランスキーの映画は、どれも刺激的で、おもしろい。個人の私生活は知らないが、最近では、ニューヨークを舞台にした「おとなのけんか」を爆笑しながら見た。子どものけんかにおとながでる。二組の夫婦の計4人のエゴが、徐々に明るみに出て、ぶつかる。まるで、人間存在そのものをからかったような映画であった。新作「毛皮のヴィーナス」(ショウゲート配給)もまた、刺激的で、スリリングな展開である。


登場人物はわずか2名。すでに終わったオーディション会場の劇場に、ワンダと名乗る女性が駆けつけてくる。ワンダとは、演出家のトマが脚色した舞台劇「毛皮のヴィーナス」のヒロインと同じ名前である。

ワンダは、すでに、SMふうの衣装を着ている。トマは、しぶしぶ、オーディションを引き受ける。ワンダは、一見、無教養そうだが、見た目とは違って、演劇の知識が豊富、舞台劇の原作や、その解釈まで、広く深く理解していることが分かる。驚いたトマは、オーディションを続けていく。やがて、演出家トマと、女優志望ワンダとの力関係に、大きな変化が生じていく。

映画は、ザッヘル=マゾッホの小説「毛皮を着たヴィーナス」(河出文庫・種村季弘訳)を、デヴィッド・アイヴスが舞台化したものに基づく。映画では、デヴィッド・アイヴスが、監督のロマン・ポランスキーと共同で脚本を書いている。言うまでもなく、ザッヘル=マゾッホとは、マゾヒズムの語源となった作家である。

カルパチアの保養地で、ある青年が貴婦人のワンダと出会う。ワンダをヴィーナスと崇め、ワンダから足げにされ、鞭打たれる青年は、性的な快感を覚える。ふたりはフィレンツェに行き、青年はワンダの奴隷となる契約を結ぶ。ギリシャ人がワンダに接近する。青年の嫉妬からの苦悩もまた、快楽となっていく。性的快楽の受けようは、人さまざまである。

人間の深奥に潜む欲望や感覚もまた、人さまざまである。この小説を非道徳と思おうと、ラブストーリーと思おうと、それぞれの解釈があっていいと思う。女性蔑視のポルノだという解釈もある。この小説の優れているのは、ザッヘル=マゾッホが、男の立場から、ワンダに「女というもの」を語らせている点にあると思う。

ワンダは青年に言う。「女の天性には、あなたが考えている以上に危険が隠されているのですもの。女って、女を崇拝したり弁護したりする人たちが考えているほど善良でもなければ、女の敵が考えているほど悪くもないものよ。女の性格というのは性格というものがまるでないこと。…どんな女も悪そのものでもなければ善そのものでもないのだから、女の思想、感情、行動ときたら、一瞬のうちに悪魔的な性質のものになったり、そうかと思うと神聖なものになったり…」と。

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