今週末見るべき映画「暮れ逢い」

2014年 12月 19日 08:10 Category : Art

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ヨーロッパの政治、文化の成熟や栄光を希求し、ヨーロッパ共同体を夢見た作家シュテファン・ツヴァイクは、伝記、小説など、多くの作品を残したが、相次ぐ戦火に、その夢は潰える。失意の晩年は、妻ロッテとともに、ブラジルで毒をあおぐ。ツヴァイクの想いは、その作品でしか窺えない。

ツヴァイクの死後、出版された短編小説「過去への旅」(本邦未訳)が、このほど映画になった。「暮れ逢い」(コムストック・グループ配給)だ。監督は、「仕立て屋の恋」、「髪結いの亭主」、「タンゴ」、「橋の上の娘」などを撮ったパトリス・ルコント。私事だが、「髪結いの亭主」のアンナ・ガリエナには、完璧に魅せられ、貪るように、何度も見てしまった。


「暮れ逢い」は、1912年頃のドイツが舞台。鉄鋼業に就職した青年フリドリックが、経営者ホフマイスターの若い妻シャーロットと恋に落ちる。いわば、許されない恋だが、青年は自ら提案した開発計画で、2年間、メキシコに向かうことになる。

シャーロットは、フリドリックに、ある約束をする。原題が「A Promise」(約束)である。フランス、ベルギーの合作で、言語は英語である。邦題の「暮れ逢い」は、たぶん造語と思うが、映画の雰囲気を、二重にも三重にも言い当てて、なるほどと思う。原作のツヴァイクのタイトル「過去への旅」を暗示するセリフも、ちゃんと出てくる。

どの作品もそうだが、パトリス・ルコントの映像は、人物、風景ともに、ともかく美しい。他の作品同様、女性のうなじ、足、後姿などをアップで捉える。そのフェチ加減がなんとも官能的。女優の魅力を引き出すことでは定評のある監督である。ヴァネッサ・パラディ、シャルロット・ゲンズブール、ファニー・アルダンなどなど、まことに美しく、艶やかに撮る。本作では、レベッカ・ホールがシャーロットを演じる。言葉には出さない心情を、目と表情と身のこなしで演じきる力量を、すでに獲得している。恋人がいながら、シャーロットに想いを寄せるフリドリックを、リチャード・マッデンが演じる。また、鉄鋼業の経営者ホフマイスターを演じるのは、アラン・リックマンである。すでに、ふたりの愛に気付きながらも、素知らぬ態度をとる難役を達者にこなす。主要キャストすべてが、イギリス勢。なぜ英語なのか、納得する。

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