今週末見るべき映画「王の涙―イ・サンの決断―」

2014年 12月 25日 08:00 Category : Art

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7年ほど前、「ユゴ 大統領有故」(イズムで紹介)という韓国映画が公開された。韓国の大統領暗殺を描いたフィクションだが、劇中に出てくる「高木正雄」のセリフから、暗殺された大統領が、パク・チョンヒであることが分かる。大統領の暗殺という史実に基づき、謎だった部分をフィクションの形で表現した映画だった。このほど公開の「王の涙―イ・サンの決断―」(ツイン配給)もまた、李王朝の第22代の国王、イ・サンの暗殺計画「丁酉(チョンユ)逆変」をめぐっての史実に、フィクションを交えて、暗殺が実行されようとした一日を描いていく。


宮廷内の権力争いである。権力を手にしようと、さまざまな陰謀がぶつかりあう。イ・サンの父は、イ・サンの祖父、ヨンジョに殺害される。王の座についたイ・サンに、暗殺の手がのびる。心を許す家臣は、去勢された官吏のカプスただ一人だ。イ・サン失脚を狙っているのは、イ・サンの義理の祖母で、祖父の後妃、ワンデビである。清廉な政治を希求するイ・サンは、祖父を支持した老論派を排除しようとする。イ・サンの動きに、老論派はイ・サン暗殺を企図する。


イ・サンに仕え、書籍管理の職にあるカプスには、秘めている過去がある。カプスは、四書の「中庸」をそらんじている教養人でもある。カプスは、孤独な王イ・サンに寄り添い、心を通わせる。

冒頭、カプスが暗誦している「中庸」を語る。「天下において、至誠を尽くす者のみが、己と世を変えることができる」と。どこかの国の施政者に差し上げたい、名言である。

原題は「逆鱗」という。龍の首に、逆さまに生えている鱗で、逆鱗に触れる、すなわち、王の怒りを買うことを意味する。国のありようを巡っては、権力に対抗する反勢力が、必ず存在する。

さまざまなジャンルで、しっかりした映画製作を続けている韓国である。本作もまた、格調高い、本格的な時代劇である。衣装や、セットなど、細部まで、しっかりと考証を重ねて、リアルである。イ・サン暗殺に向かう老論派と、イ・サンを守ろうとするる近衛隊との迫力あるアクション・シーンも用意されて、しっかり見せてくれる。

王イ・サン役のヒョンビンが、凛々しい。テレビ・ドラマの「シークレット・ガーデン」が大ヒット、海兵隊に志願しての復帰第一作となる。剣さばき、弓扱いの訓練を積んだという。うまいものである。イ・サンの信頼するカプス役のチョン・ジェヨンは、多くの役柄を達者にこなす器用な俳優。ここでは、心理描写での演技が、重厚そのもの。秘かに権力を狙うワンデビ役のハン・ジミンが、美しい悪女を演じて、魅力的。


宮廷の権力争い。さまざまな陰謀。男同士の心の交流。アクション・シーン。いずれもが、きちんと撮られていて、韓国映画界の底力を感じる。監督は、多くのテレビ・ドラマを演出したイ・ジェギュ。映画監督としてのデビュー作だが、展開の早さ、いくつかの追想シーンの挟みようなど、すでに手だれの演出ぶりで、存分に楽しめる。本年最後を飾るにふさわしい韓国時代劇である。

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