今週末見るべき映画「妻への家路」

2015年 3月 5日 08:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

チャン・イーモウ監督の新作「妻への家路」(ギャガ配給)は、まさに「歴史的悲劇」である。「歴史的悲劇」とは、2012年3月、温家宝が薄煕来を批判した発言である。「文化大革命のような歴史的悲劇が再び起きることを危惧する」。映画は、切なく、悲しく、辛い。1958年からの反右派闘争、1966年からの文化大革命のせいで、切り離された夫婦とその娘の悲劇が、丁寧に描かれる。

1958年、約55万人の右派とみられた人物を辺境への労働に追いやる。この悲劇の詳細は、ワン・ビン監督の「無言歌」で、あざやかに描かれていた。監督は、1987年、「紅いコーリャン」を撮り、1990年には「菊豆(チュイトウ)」撮ったチャン・イーモウである。自身、文化大革命時に下放され、強制労働を経験している。2000年の「初恋のきた道」では、純愛を描くと見せて、背景となる歴史の悲劇を再現してみせた。コーエン兄弟の「ブラッド・シンプル」のリメイクとはいえ、2009年の「女と銃と荒野の麺屋」(イズムで紹介)では、傑作のエンタテインメントを撮ったチャン・イーモウである。


20年間、反右派闘争、文化大革命で拘束された男ルー・イェンシーが、文化大革命の終結後、家に戻ってくる。妻フォン・ワンイーが、ルーだけの記憶を失っている。フォンは、娘タンタンとの確執を抱えている。ルーは、フォンの記憶を取り戻そうと必死になる。まことに切なく、悲痛な話である。右派として20年も拘束された後、すべての権利が回復されたとはいえ、ルーやフォンの夫婦にとっては、すでに、やり直すことのできない人生である。

原作がある。上海出身の小説家、脚本家であるゲリン・ヤンの小説「陸犯焉識」を、「単騎、千里を走る。」や「グランド・マスター」の脚本を書いたズォウ・ジンジーが担当する。ゲリン・ヤン自身も、「シュウシュウの季節」や「花の生涯~梅蘭芳~」(イズムで紹介)の脚本を書いている。チャン・イーモウは、絶妙の脚本を得て、語り口の巧さを見せつけてくれる。

Related article

  • 世界の一流とアジアの新鋭が集う、香港アートの旅
    世界の一流とアジアの新鋭が集う、香港アートの旅
  • フィンランドを代表する、サンテリ・トゥオリ日本初個展
    フィンランドを代表する、サンテリ・トゥオリ日本初個展
  • カンヌ国際映画祭開幕。「カンヌ」とはいったい何なのか
    カンヌ国際映画祭開幕。「カンヌ」とはいったい何なのか
  • 今週末見るべき映画「スーパーメンチ -時代をプロデュースした男!-」
    今週末見るべき映画「スーパーメンチ -時代をプロデュースした男!-」
  • さまざまな体験からみちびかれるアート|ホンマタカシ「Seeing Itselfー見えないものを見る」
    さまざまな体験からみちびかれるアート|ホンマタカシ「Seeing Itselfー見えないものを見る」
  • 今週末見るべき映画「ロブスター」
    今週末見るべき映画「ロブスター」

Prev & Next

Ranking

  • 1
    山中俊治ディレクション「骨」展
  • 2
    コムロタカヒロ氏、インタビュー。「KISS THE HEART#3」
  • 3
    舞台「趣味の部屋」レビュー
  • 4
    今週末見るべき映画「幸せのありか」
  • 5
    江戸な縁起ものを暮らしに/其の二「江戸扇子/伊場仙」
  • 6
    デザインから見る、新型MacBookの凄さ(2)
  • 7
    30年ぶりの大規模な「フランシス・ベーコン展」
  • 8
    閉幕まであとわずか、必見のディーター・ラムス展
  • 9
    美山荘(京都・花背)/美味しい宿、美味しい旅(1)
  • 10
    「西野達 別名 大津達 別名 西野達郎 別名 西野竜郎」出版記念展

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加