今週末見るべき映画「恐怖分子」

2015年 3月 13日 08:05 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

ほんのちょっとしたきっかけで、人間の内奥に潜む暗部が露わになる。それほど意識しなくても、人間のとった行動の些細なことが、悲劇につながる。もちろん、時代背景が、そこに横たわっている。台湾のエドワード・ヤンが、1986年に撮った「恐怖分子」(フルモテルモ、コピアポア・フィルム配給)は、そのような映画だ。このほど、デジタルリマスター版でよみがえる。1996年の日本公開以来、19年が経過している。


タイトルに「恐怖」とあるが、いわゆるホラーではない。ある意味、ホラーより心理的には、「恐い」映画かもしれない。エドワード・ヤンは、孤独や不安を抱える人間たちに接近する。色褪せていない。現代でも、未来でも、台湾だけでなく、世界のどこでも通用するテーマと思う。すでに30年ほど前、エドワード・ヤンが描いたのは、台湾経済が大きく変動する時期である。台湾元の対ドル・レートの切り上げや輸入の自由化が行われた時期にあたる。しかし、人間の心に潜む闇、その奥は、ちっとも変わらない。むしろ、心の闇は、ますます深くなっていくようである。


1980年代のいつか。台湾北部の都会。登場するのは、病院で病理検査をしている男と、小説を書いている妻。その妻と元上司の男。徴兵を控えた若いカメラマンとその恋人。カメラマンが知り合う少女とその母。さまざまな事件に関わる警部など。

賭場らしき場所での発砲事件がある。男と女の関係は、うまくいかない。よりを戻そうと、男たちは動くが、いい結果に繋がらない。母と娘の仲は、ぎくしゃくしている。男の務める病院では汚職があり、密告があり、出世競争がある。少女は美人局まがいの犯罪に手を染める。現実は、きれいごとばかりではない。いつの時代、どこでも、起こりうることが、静謐に提示される。削ぎ落としたような、少ないセリフだが、密度は濃い。登場人物の表情、視線が、セリフ以上の多くを物語る。

Related article

  • 大英博物館プレゼンツ 北斎 【今週末見るべき映画】
    大英博物館プレゼンツ 北斎 【今週末見るべき映画】
  • 東京デザイナーズウィークが生まれ変わる!
    東京デザイナーズウィークが生まれ変わる!
  • 森山大道の初期マガジンワークより幻の名作写真シリーズ
    森山大道の初期マガジンワークより幻の名作写真シリーズ
  • 今週末見るべき映画 「ふたりのイームズ:建築家チャールズと画家レイ」
    今週末見るべき映画 「ふたりのイームズ:建築家チャールズと画家レイ」
  • 今週末見るべき映画「トレヴィの泉で二度目の恋を」
    今週末見るべき映画「トレヴィの泉で二度目の恋を」
  • カラーコレクションで蘇る、イヴ・サンローランのクリエーション
    カラーコレクションで蘇る、イヴ・サンローランのクリエーション

Prev & Next

Ranking

  • 1
    時を経た植物の美しさ。叢(くさむら)小田康平氏インタビュー
  • 2
    グリーン ポルシェ!  パナメーラS e-ハイブリッド
  • 3
    東京フィルメックス「木下惠介生誕100年祭」銀座メゾンエルメスでの無料上映も
  • 4
    ドイツ、インテリアファブリックの祭典で見つけたアイディアと新作
  • 5
    #謎1|パーク ハイアット 東京、その謎
  • 6
    銘酒「Ohmine」 を誕生させた秋山剛志氏に聞く―Bamboo Stylus duoで生まれる「伝え方」
  • 7
    ベロニカとの記憶 【今週末見るべき映画】
  • 8
    ラッキー 【今週末見るべき映画】
  • 9
    あの“ティム・バートン”の展覧会が日本初上陸!
  • 10
    完璧に構成されたフレーミング。『田村彰英 夢の光』が開催中

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加