今週末見るべき映画「神々のたそがれ」

2015年 3月 20日 08:00 Category : Art

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まるで、スターリンの粛正、毛沢東の反右派闘争や文化大革命を思わせる構図である。原作の書かれたのは1964年である。軍拡を推進したフルシチョフは、1962年のキューバ危機の後、失脚した年である。引き継いだブレジネフ政権は、アメリカに対抗して、アフガニスタンに侵攻する。


知識人狩り、処刑、権力闘争と、映画は、徹頭徹尾、凄惨な表現に終始する。観客は、モノクロームだからこその画面に、想像力を働かせることになる。雨が降り続いている。泥だらけの道。家畜がうろうろ。奇妙な鎧に身を固めた兵士たち。処刑された人たち。さらに、夥しい血や人間の内臓と思えるものまで。ちょうど、ヒエロニムス・ボスの三連祭壇画「快楽の園」右側に描かれた「地獄」を想起する。


アレクセイ・ゲルマンは、なぜ、ここまでの凄惨な表現をするのだろうか。劇中、地球から派遣された学者のひとりのドン・ルマータが言う。「抑圧者は絶えず現れる」と。これは、SFでもフィクションでもないのではないか。大勢の人間がいる以上、常に、抑圧者は現れ続けるのである。凄惨な表現に託したのは、あまりにも愚かな人間への警告ではないかと思えてくる。強い者、権力者が、弱い者を抑圧する。弱い者が団結して、強い者を倒しても、弱い者のなかのマシな者が権力を手にし、さらに弱い者の抑圧に向かう。まことに「神様はつらい」のである。

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