今週末見るべき映画「やさしい女」

2015年 4月 3日 08:05 Category : Art

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ロシアのドストエフスキーの原作、映画化はフランスのロベール・ブレッソン。ともに傑作と思う。「やさしい女」(コピアポア・フィルム配給)は、優れた心理描写で全編を貫く。ドストエフスキーの原作は、モスクワでじっさいに起こった事件をもとに、1876年に書かれている。ブレッソンが「やさしい女」を撮ったのは1969年である。舞台を60年代のパリに置き換え、原作の骨格を巧みにダイジェストする。


原作同様、男と女に名前はない。ある事情から質屋を営んでいる中年男がいる。まだ若い妻が飛び降り自殺をする。男はうろたえながら、妻の遺体を前にして、妻との出会いから、結婚生活がどのようなものだったかを回想する。そして、なぜ妻は死んだのかの答えを自分なりに出そうとする。原作も映画も、すべて、内的独白の形で進行する。

時代、場所が異なるとはいえ、人間の心の内に潜む意識は、そう変わるものではない。貧しさゆえに結婚した若い女は、男の実体を知るにつれ、いわば軽蔑に近い想いを抱き始める。さらに、男に対しては、あてつけがましい態度を取ったり、あえて、嫉妬するように仕向けたりする。やがて女は沈黙し、男も沈黙する。男は、勝手に、女を多角的に分析しようとするが、女の「死の真実」に迫ることはできない。

原作では、ほぼ後半にこうある。「…彼女は私を尊敬してしていただろうか? 分からない。彼女は私を軽蔑していたか、そうではないか? 軽蔑していたとは思えない。おそろしく奇妙なことだ。いったいなぜ、彼女が私を軽蔑しているかもしれないという考えが、冬の間ずっと、一度たりとも私の頭に浮かばなかったのだろうか?…」(講談社文芸文庫・井桁貞義 訳)。

少ないセリフながら、女を演じたドミニク・サンダの表情、視線が雄弁である。なにもかもを射ぬくような醒めた表情、視線である。観客は、男の独白の助けはあるけれど、いろんなシーンでの女の視線、表情から、いったいなにを考えているのかを想像することになる。さらに、決定的に、女が男への侮蔑に至るシーンが、複数、出てくる。撮影当時、まだ16歳とは思えないドミニク・サンダの沈黙した表情、視線が、圧倒的に迫ってくる。当時、ドミニク・サンダは「ヴォーグ」のモデルだったが、これが映画初出演とはとても思えないほどの存在感を示す。後に、ベルナルド・ベルトルッチ作品で快進撃することになる。

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