今週末見るべき映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

2015年 4月 9日 08:00 Category : Art

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これは、痛快。ブラックな笑いに満ち、アメリカの映画界や演劇界へのまるでパロディ。かつて、ヒーロー映画「バードマン」で、栄光を手にした映画スター、リーガンが、落ちぶれてしまう。「バードマン」シリーズの4作目の出演を断ってから20年。リーガンが、かつての夢再びと、起死回生で取り組もうとした演劇が、レイモンド・カーヴァーの短編小説「愛について語るときに我々の語ること」(中央公論新社・村上春樹 訳)である。

4人の男女が、ジンを呑みながら、さまざまな愛のありようについて議論する。メルという45歳の心臓の専門医、DVの夫から逃げてメルと再婚したテレサ、語り手は38歳のニック、その妻で元弁護士の秘書ローラの4人が登場する。この小説を、リーガンが脚色し、演出、主役までこなそうとする。

映画「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(20世紀フォックス映画配給)は、長い、意味深長なサブタイトルが付けられている。サブタイトルの意味は、映画の後半で明らかになる。なるほど、と腑に落ちる。


挫折した人間が、夢よもう一度とばかり、再び栄光の座を目指す話は、古今東西、あまたある。栄光を手にしても、いつか、忘れられ、見捨てられてしまう。いつまでも、輝いた日は続かない。再び、カムバックを目指しても、困難は多い。むしろ、生きづらい世の中に、どう折り合いをつけていくのかがそれぞれに問われることになる。


リーガンは、他者との折り合いに苦しむ。世の中の俗事や、およそ欠陥を抱えた人間とも、共存していかなければならない立場になる。原作にした小説「愛について語るときに我々の語ること」のメルたちが、それぞれが愛について考えたように、リーガンは、演出し、演じることで、自らの愛を希求する。

リーガンのもうひとつの自我でもある「バードマン」が、コスチュームのまま登場し、リーガンに語りかける。「余計なことをしてどうする?」、「つまらないことに手出しするな」と。表現は、だから幻想的。しかし、奇抜というものではない。むしろ、超リアル。また、ほとんど、ワンカットのように工夫された映像が、リーガンの数日間の葛藤、苦労を描いていく。このあたりが、あまたある復活劇の凡庸さとは、異なる点だろう。また、脚本、セリフ、人物造型が、巧みで秀逸。アメリカの映画界、演劇界への皮肉や、からかいに満ちて、くすくす笑ってしまう。

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