今週末見るべき映画「インヒアレント・ヴァイス」

2015年 4月 17日 08:00 Category : Art

このエントリーをはてなブックマークに追加

トマス・ピンチョンが2009年に書いた、とびきりの小説「LAヴァイス」(原題は「インヒアレント・ヴァイス」・新潮社・栩木玲子+佐藤良明 訳)を原作に、「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」、「ザ・マスター」(どちらもイズムで紹介)を撮ったポール・トーマス・アンダーソンが脚色、監督したのが「インヒアレント・ヴァイス」(ワーナー・ブラザース映画配給)だ。


トマス・ピンチョンの写真は、若い頃のものしか公表されていない。だからほぼ正体不明。数々の文学賞を受けながら、人前に現れない。その著作の映画化を、いままで許可しなかった。これが、トマス・ピンチョン著作の初の映画化になる。

つい最近、トマス・ピンチョンが1973年に書いた大作「重力の虹」を読み始めたが、あまりにも気宇壮大、中断している。第二次世界大戦の終戦前後、アメリカ軍中尉のスロースロップが、混沌としたヨーロッパをさまよう。ドイツのV2ロケットが出てくる。心構えがないと、とても読み進めない。

その点、「LAヴァイス」は、マリワナなどのドラッグ好き、ヒッピーふうの私立探偵、ドックことラリー・スポーテッロの冒険話で、これは比較的、読みやすい。70年代ロサンゼルスの、さまざまな風俗や文化、政治背景がテンコ盛り。そこに、土地開発に絡む陰謀や、正体不明の秘密結社、さらに、大規模の麻薬密輸組織が登場する。さまざまな利権が絡むのだろう、警察やFBIの堕落、腐敗までが見え隠れする。多くの、いかがわしさたっぷりの奇人変人、へんてこな人物がぞろぞろと出てくる。もちろん、背景の裏に込められた、深い狙いがあるのだが。


原作、映画には、「グルーヴィ」という言葉が頻出する。原作の訳注では、『「カッコイイ」「キマッテル」から「了解」「賛成」まで広い意味で使われたヒッピー時代の肯定語』とある。探偵もの、犯罪もののコメディを装いつつ、ロサンゼルスのミクロな社会を描くことで、当時のアメリカが抱える恥部をほのめかす。原作の巻頭に、「舗道の敷石の下はビーチ! 一九六八年五月、パリの落書きより」とある。映画では、エピローグで示される。若者たちは、パリの舗道の敷石を剥がし、「自由」と「革命」を信じて、機動隊に石を投げる。敷石を剥がすと、下には、「自由」という砂浜、海が広がっていると信じて。

Related article

  • 今週末見るべき映画「カプチーノはお熱いうちに」
    今週末見るべき映画「カプチーノはお熱いうちに」
  • 【レポート】第一回ヘンタイ美術館、「~どうかしちゃってる天才たち~」
    【レポート】第一回ヘンタイ美術館、「~どうかしちゃってる天才たち~」
  • アートと水槽の融合—アートアクアリウム展が東京・日本橋で開催
    アートと水槽の融合—アートアクアリウム展が東京・日本橋で開催
  • セレブリティ100人が証言する、女流写真家のドキュメンタリー
    セレブリティ100人が証言する、女流写真家のドキュメンタリー
  • 謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス 【今週末見るべき映画】
    謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス 【今週末見るべき映画】
  • 今週末見るべき映画「火の山のマリア」
    今週末見るべき映画「火の山のマリア」

Prev & Next

Ranking

  • 1
    フォトイメージングエキスポ2007
  • 2
    レイングッズだから楽しめるド派手カラーの雨の日アイテム
  • 3
    今週末見るべき映画「1001グラム ハカリしれない愛のこと」
  • 4
    ドワネルさんがおすすめする、夏のさわやかワイン
  • 5
    ドイツのデザイン家電が100台!ミーレのショールームが目黒に
  • 6
    大人の炭酸で乾杯したい「トゥモローランド」
  • 7
    シュールに歪んだデビアス銀座が3/20オープン
  • 8
    現代アートの最先端から次世代の「視点」を見る、森美「六本木クロッシング2013展」
  • 9
    中島かずき氏インタビュー|どんなときでも、とりあえず手を動かす
  • 10
    2018年12月15日~2019年2月2日(土)Ahn Jun「One Life」展 CASE TOKYO

Excite ism :

このエントリーをはてなブックマークに追加