舞台「趣味の部屋」レビュー

2015年 4月 18日 08:00 Category : Art

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舞台はマンションの一室。正面には巨大な冷蔵庫とキッチン、上手(向かって右)には無数のガンプラが並んだ飾り棚。下手(向かって左)は本がぎっしりの重厚な棚がある。そこは男たちの「趣味の部屋」だ。家庭や仕事から離れ、思う存分自分の趣味を楽しむ場として数人で借りているという設定に、観客の誰もがうらやましいと思うだろう。

料理が趣味、しかも変わった食材を試すことに情熱を注ぐ天野信親(中井貴一)は内科医で、この部屋のリーダー的存在。古書集めが趣味の水沢昭雄(川平慈英)は車のセールスマン。コスプレしてガンプラを作っている金田登(白井晃)は大学の医学部で教鞭をとっている。おそらく、ふだんの彼らからこの趣味は想像がつかないだろう。もうひとり、一生懸命ストレッチをしている土井祥太郎(戸次重幸)は化粧品メーカーのサラリーマンで、趣味をみつけるためにこの部屋に参加している変わり種だ。


あるとき、部屋に巡査の宮地ミカ(原幹恵)がやってきて、行方不明の男について天野たちに聞き込みをはじめた。その男は、この部屋の趣味仲間だった。まさかこの部屋の住人たちの誰かが男に何かしたのではないか? 舞台の序盤はこの謎が中心。やがて、この部屋は実は趣味を楽しむだけの牧歌的な場ではないのだということも明らかになると、部屋の空気が徐々にダークになっていく。

脚本は奇才・古沢良太。いまや、三谷幸喜や宮藤官九郎のような脚本家の名前で作品が見たくなる作家のひとりである。

それぞれの人物に何枚もの仮面をかぶせ、それを少しずつ剥がしていく古沢の手つきは、まるでマジシャン。目と鼻の先で、次々とマジックを披露して驚かせるように物語を勧めていく。今年1月〜3月に放送されたドラマ「デート〜恋とはどんなものかしら〜」も公開中の映画「エイプリルフールズ」もどこにボールが転がっていくか予想がつかないストーリーだったし、堺雅人が立て板に水のごとく長台詞をしゃべる法廷ドラマ「リーガルハイ」シリーズも、正義の味方のイメージがある弁護士の意外な部分を描きながら、裁判における弁護人と検事との心理戦をスリリングに描いた傑作だった。

古沢の作品はどんでん返しに次ぐとんでん返しが見どころであることは重々わかっているので、作品を見るたびに絶対騙されないぞと目を凝らす。だが結局まんまと死角をつかれ騙されてしまう。悔しいが痛快、そんな複雑な悦楽が古沢の描く作品にはいつもある。「趣味の部屋」も笑いとサイコミステリーの境が巧妙なまでにわからなくなっていた。

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